久しぶりに案内板に目を向けたのは、ボンフレスコという名前の、漆喰が塗られて間もないアパートの中庭だった。


もはやどこへ行ったら良いのか分からなくなっていた。




「270403番地か。100000番地を見たときは驚いたもんだが、今じゃ笑いが出るな。そうしないと狂いそうだ」



ふと空を見上げると、大地からはがされたような緑豊かな島が、低いところを雲と一緒にゆっくりと横切っていく。この町では、そういった風景も日常のようだ。




島から落ちて空に溶ける滝が虹を作る下、ボンフレスコのベランダの柵に寄りかかって抱き合うカップル。





それを見ていると、私は急に強い空腹を覚えた。