「やあ、これはこれは」 目を開けると、引き抜かれたごぼうのような男が立っていた。 彼は山高帽を上げ、口髭を生やした顔を傾けて、私に挨拶をした。 エンの姿を探して視線をさ迷わせた私は、目にした情景に圧倒されて立ち尽くした。 闇を食い破る光に溢れた、そこは夜の街角だったのだ。 雑踏は無秩序に入り乱れ、エンの姿はどこにも無かった。