「まあ、こんな感じだ。よかったら、君の旅についても教えてくれるかな」




 私は気軽に尋ねたつもりだ。だからエンが迷いに顔を曇らせたとき、内心ひどく驚いた。




「妹がいるのよ」



これが話しはじめだ。



「いいえ、いたのね。

頭は悪かったけれど、とても可愛い子だったわ。臆病なくらい優しかった。

あの子はね、旅をしていたの。そして、その中で息を引き取った。ほかの、たくさんの旅人と同じように。

私はあの子の旅を辿りながら、あの子が生きた証を探し集めているのよ」





 エンの妹の足跡が次に向かっていたのが、ミュシャだという。



彼女は、どれだけの若さで旅をしていたのか。どれだけの若さで旅を終えたのか。





白緑のワンピースは、彼女の唯一の、そして物言わぬ形見だった。