「エン、案内者についてなんだが……」

「ごめんなさい、何か来たわ」



 はじめは岩の影に見えた。洞穴には人ならざる彫刻家の作品がひしめいていた。だから、影も暗く歪んでいるのだ。

だがそれは、気味の悪い染みとなって地面を這い、エンの足元に来るころには平面的なものでなくなっていた。



 人の頭によく似た紫紺の液体。
目にあたる部分に淋しげな光を燈して、不規則に脈打つ。






「な、なんだこれは。ここに住んでいるアメーバか何か、かな。どちらにしても、交流はのぞめそうに無いな」

「本物の案内者みたいよ」

「なんだって。何だって!」




「変なにおい。名前がぼやけているわ」