ミュシャを目指して以来、私はエンの背中を追っている。


彼女は、道の選択にためらうことがない。通い慣れたような、でなければ、何か強い力に引かれているような。
土地に巣くう未知に、まるで怯える様子を見せないのだ。


それが恐ろしくもあり、驚くことに楽しくもあった。



「おじさんに騙されたり、虫に食べられそうになったり、穴に落ちたり。いつになったら、案内者に会えるのかしらね」





 子供のころ、父に貰った方位磁針を振り回し、針がやがて一定の向きで止まるのを楽しんでいた。


雪色の髪を見ながら、私は何故かそのことを考えていた。