彼女の言葉がよみがえる。
「……あとは案内者だよ迷子の坊や。それと出会うのは、死神から隠れることに比べたらかなり簡単さ」
丸みを帯びた三角形の貝殻の両脇で、小さく切り出された桃色珊瑚が光る首飾り。
夜風に吹かれながらそれに触れていると、ふしぎと落ち着いた気分になる。
「いつまでも気を抜くんじゃ無いよ。ミュシャへの案内者は予期せぬ形で現れる。砂漠にクジラはいないなんて、くれぐれも思わないことだ……」
流れる砂の景色にため息をついて窓に背を向けたとき、私は初めて、客車に少女がいることに気が付いた。
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