彼女は片っぱしからゴミ袋の口を開け、顔を突っ込んで食べられる物を探し、見つけたら取り出した先から食べた。
絵具がべったりとこびりついたエプロンを膝までたらしていたが、それに汚水がかかることもいとわなかった。
頭よりも大きな赤いベレー帽が、よく熟れたりんごのようだった。
「パンよ。パンがいるのよ。どこかにパンはないかしら」
彼女は尋ねたが、ゴミを捨てた若者は店の中に戻ったあとだった。
きっと若者には、路地裏に彼女の姿しか見えなかったのだろう。
私はやはり、気づかれなかったのだ。
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