「副社長がお呼びです」


 中山春は、抑揚のない声でそう俺に告げた。


「副社長? 社長の間違いではないですか?」


「いいえ、間違いではありません。副社長のオフィスへ、ご同行いただけますか?」


「分かりました」


 結衣との離婚の事で、結衣の父親である社長からの呼び出しだろうと想像したのだが、俺を呼び出したのは副社長の一条海らしい。


 と言っても、離婚の話には違いないだろう。あるいは、一条海は社長の代理という事かもしれないな。


 俺は席を立つと、中山春と並んで歩き出した。


 ん?

 あの茶髪男の大家も中山さんだよな。名前は確か……秋。中山春と秋ねえ。よく似た名前だなあ。