「それで、駅でいちるを見付けた。

最初はどうして良いか自分でも良く分からなかったけど
気付いたらいちるの腕掴んで走ってたよ」



「あの時は、あたしどうなるんだろって思ったよ」


ふ、と自然に笑みが漏れる。


今も腕に残る、勢い良く掴まれた感触。

不思議な事に当の本人は今も目の前に居る。




そう言えば、



「何であたしだったの?」


「え?」


駅だし、周りには人が沢山いた。

綺麗なお姉さんだって可愛い女の子だってきっと沢山居た。


なのに、



「いろんな人、周りに沢山居たのに

何であたしの事誘拐しようとしたのかな、って」



疑問に思ってた。


平凡々なあたしだから、こんな事に巻き込まれるなんて想像もして無かった。



だから――