「胸キュンだぁ…」


「なーに読んでんの?」



私しかいないはずの教室で、後ろから急に声が聞こえたので、私は肩を揺らしてしまった。




「あ。祐希…」



声のした方に顔を向けると、そこにはバスケットボールのユニフォームを着た祐希の姿があった。



「…横書きの本ってことは、ケータイ小説か」


彼は私の手元にある本を覗き込むと、ぽつりとそう呟き、



「杏理が読書なんて珍しいと思ったら…ケータイ小説か〜。なんか納得〜」



1人でケラケラと笑いだした。




「うっさい!」



私はすぐに手元のケータイ小説を鞄の中にしまった。