本を元の押し入れに入れて揺れる頭を抑え、それでも尚も足を動かす。薺がいないこの間が何をするにも絶好のチャンスだった。

最も、運よく雛の元へとたどり着いたとしても薺と遭遇するのは避けられないのだろうけど。

自らの勘を頼りに行っていないと思われる場所に進む。全部同じ作りで行っているか行っていないか分からないにも関わらずだ。

そうしてまた次の角を曲がった時。


「きぁ、あぁぁぁ――!」


確かに聴こえた絶叫と変わらない叫び。耳まで突き破ってくる声に反射的に体が跳ねる。

それは止む事なく断続的に叫び続けられる。


「助けて……っ!助けてつばきくん!」


確かに聴こえた。涙声に交じり聴こえた。

聴こえたんだ雛の声が。