見間違うだなんてどうかしてる。間違えれる筈無かったのに。


「この桜、薺が生まれるずっとずっと前からあったんだって」


柊様はそれらを気にも止めず無邪気に桜の木に駆け寄る。

私はどうしても数歩離れた場所から動く事が出来なかった。目が手から離れない。

それに柊様は気付いた。


「ああ、これ?」


その場に屈み、指の隙間に指を絡ませ握り合うかの如く繋ぐ。


「これはね、要らなくなったお人形。埋めてあげたの」


自身のもう片方の手で、手首を撫でる。“人形”と呼ぶ手を。


「にん……ぎょう?」


けれどそれはどう見ても生身の人の手で、呆然とただ見ているしかできなかった。他に何が出来るか。

時折蝿が埋められた手に集り、気持ち悪さを感じずにはいられない。