手を僕の髪に伸ばしてきて、撫でる。愛でるように。


「たとえ互いしか見ていなくてもいいから、此処に居てね。ずっと、ずっと……ね」


ずっとだなんて、あり得ない。ここにいたらいつかは死んでしまう。

予感じゃなく確信だった。いくら薺が僕らを殺さないと言ってもそれは信憑性に欠ける事だ。

どんな時でも、弾みで殺してしまう。そんな危うさを感じずにはいられない。

それでも生唾を飲み込み、恐る恐る口にした。


「何を……望んでいるんだ?」

「分かんないかなぁ?一緒にいてほしいだけだよ」


キョトンと首を傾げてそう言う。

シンプルな言葉は時として嘘臭い。いや、薺の存在こそ嘘臭い。

けれど何でか、今の薺の言葉は本当の事のように聞こえたのだ。何故――?