咄嗟に戸から離れる。

睨み付けんばかりの勢いで見ていると、返事をしても居ないのに戸の向こうの人は言ってきた。


「椿様。起きてらっしゃいますか」

「!」


声から推測するに、中年くらいの男だろうか。少ししゃがれている。

だが、それよりもこの家に他の人間が居た事に驚いた。

でも、考えてみれば雛が二階で声を上げていたのが別の人間に対してだったなら、薺が僕の元に来ていた事が容易に説明がつく。

それでもこれは別問題だ。


「椿様。お食事の用意が出来ているのですが」


一体この家はどうなっているのか。