広く、その上知らない屋敷だから何処に隠れればいいとかそんな事分かるはずもなく、私が選んだのは幾つかの部屋を越えた先の押入れだった。

押入れの隅に小さくなり、息を潜める。

すぐに見つかるかもしれない。だけど、30秒はとっくに過ぎている筈。

だから一度隠れて様子を見た後、また移動する。

そうするしか……


――……ギィ…ギィ……。


「!!」


その時、小さいけれど床が軋む音が聞こえた。

一歩一歩、ゆっくりながらに確実に近づいて来ているのがわかる。

即座に歯を食い縛り、何があっても声が出ないように口を両手で押さえた。

息もできなくなるくらい強く抑えた。

音が大きくなるまであと少し。