漸くしてから薺は手を引っ込めると、ニッコリと此方に笑みを向けてきた。
近くなる、顔と顔。
「邪魔、しないでね。椿とも遊びたいけど今日は雛なの。絶対邪魔しないでね」
笑顔からは想定出来ない殺意の隠った声。飲み込まれそうな赤。
「ぐっ……」
薺には実際に殺意がある。僕の首に再びまわる手がそれを伝えてきていた。
ドクンドクンと脈を打っているのがよくわかる。そこまで締め付けられこそしていないが息苦しくもなった。
「邪魔、しない？」
「っ！」
だがその息苦しさが、まだまだ生温いものだと言ったのは一瞬の事だった。
