「椿、雛の所に行くんでしょ?残念、行かせないよ。今日は薺が雛と遊ぶんだから」


駄目だと言いたいのに言えない。払い除けたい手があるのに払い除けられない。つー、と白い手が首筋から鎖骨に掛けてまでなぞる。


「やめ……っ」


ゾクリと体が震えてまた吐き気を連れてくるような気がした。

触れた手が気持ち悪い。触れるな。


「雛と椿。仲良しだよね。いいな。羨ましいな」


それは本心のように聞こえ、羨ましいと言うよりも妬みに近く聞こえた。

薺が何を求めているのか分からない。何を欲しているのか分からない。

だからこそ、恐怖の対象になり得る。

気が付けば二階からは音が無くなっていた。