「ぅ……」


臭い。真っ先に異様な臭いが鼻についた。

あり得ないほどの力で引っ張られ、連れてこられた場所は何も置かれていない広すぎる部屋。

握りしめられていた手首はジクジクと痛みとして攻撃してきていた。

が、突然離されたかと思うと爪の間にまで入り込んでいるであろう血を構いもせず、自らを薺と呼んでいた人間が押し入れに駆け寄った。

花の絵が描かれた押し入れを一生懸命開く相手。

この隙を見て雛と一緒にこの家から逃げ出そう。

正確に薺と焦点を合わせ、隙を探しだそうとしていた。なのに、行為は一瞬にして出来なくなった。


「これね、薺の最近のお気に入りなんだ」


笑い、引き摺りながら押し入れから出してきたのは……



人間。