森の中に隠れるかのように佇む古い屋敷。

古くはあるが老朽化等は進んではおらず、手入れもそれなりに行き届いているようにも見えた。

それでも、不気味さがある屋敷。

この場所は、村の誰もが知っている偉い人の屋敷で、幼い頃から言い聞かされてきた“絶対に踏み込んではいけない場所”

只単に偉い人の家だからと言うだけだったとは思うが、そんな場に僕は今足を踏み入れようとしていた。

風が木々を揺らし、葉を舞い散らせる。ヒラリヒラリ、僕の手元に。


「雛……」


一歩、踏み出す。

彼女を想えば不安ばかりが駆け巡り、幼い頃の言い付けも今簡単に破った。

無事である事を祈るばかりだった。それしか出来ない。