--


ぶつけた椅子は木造の壁を破り、新たな道を広げる。出口への扉。


「ここ……」


私は椿くんに何も説明しない。言えるのは謝罪だけ。

痛々しい目に目を向け、また前を向いた。

柊様はもう追ってこない。先に囁かれた言葉を信じてはいけないけれど、今はそれを信じるのみ。


『これで、薺と同じ。遊んでくれてありがとう。ごめんね。さようなら』


そんな切実な言葉を信じるだけ。

不幸は分け終えた。歪な愛は注がれた。


「――……」


それはすべて、柊様の不幸だったとあの人は自ら言った。だから足を手を奪ったのだと。そして最後に目を奪ったのだ。