そこから薺が現れるでもなく、到着したのは行き止まり。
道を間違えたかと呆然と思うが、雛は僕から手を離し壁を叩き始めた。
「……雛?」
いや、叩くだけじゃない細く綺麗な指に張り付く爪を板張りの壁と壁の間に差し込ませてまで何かをしようとしている。
「く、ぅ……っ」
何かは分からないが、雛は必死で、爪から血が滲んでも止めようとしなかった。歯を食い縛り、涙を浮かべている。
「っひ、な!」
気付けば一つ飛んだ、白い爪。
「っ~~!」
僕が絶句すると、雛は小さく叫びを上げたものの、また壁を叩いた。
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