口元を拭い、息を目一杯吸い込んだ。 出口を見つけたら私は……。 代わり映えのしない景色に不安を覚えたが、それは掻き消された。 「あ、椿と雛みっけ!」 無邪気な声に。 「逃げるの早いね」 此方に向かう足音に。 「椿くん、早くにげ……」 ……逃げれない。足手まといは私。邪魔なのは私。 「私はいいから椿くんは逃げて……っ!」 切羽詰まった声を上げ、繋いでいた手を離すも離れない。