直ぐ様に椿くんを押し入れるように近くの部屋に入り込む。


「雛!?」

「しっ」


小さな咳払いに気付かなかった椿くんは何事かと声を上げる。それを黙らせる。

障子には影が映っていた。一歩一歩踏みしめるように歩くそれは一枚二枚と障子を通過していく。


「なず、な」


掠れた声も椿くんにしてみれば無意識だろう。目をこれでもかと見開きながらも影を追い掛けていた。

まだ、まだ、まだ。影は消えない。

まだ、まだ、まだ。音は止まない。

まだ、まだ、まだ……


柊様が歩みを止めた。


二人して息を飲む。止める。