―向き合う心― 【先生目線】






俺が仕事に行こうと車のエンジンをかけた時だった。




運転席の窓から、あの人が見えた。




隣の田辺さん。



吉田と呼ぶのはやめた。生徒気分になって喜んでいるようだったから。






「おはようございます!先生!!」





だからぁ・・・・・・



先生って呼ぶなよ。





「おはようございます」





しっかり壁を作る。



こういうのは慣れている。






俺には大事な人がいる。


ただのお隣に住む人だ。



親しく話をするのはおかしいと思う。





窓越しに頭を下げた俺に、窓を開けろと言って来た。





「何ですか?」





「敬語じゃなくて良いよ、先生」




先生だけど・・・・・・先生って呼ぶのは違う気がする。





「もう、先生って呼ぶのはやめてくれないか?」



「どうして?」



「旦那さんに内緒にしてくれって言うなら、先生って呼ぶのはおかしいと思う」






その後、田辺さんから聞いた事実を、直に話せる自信がなかった。




朝から・・・・・・辛い。