「あの・・・・・・ちょっと良いかな?」





俺は車から少し離れた。




本当は、この人とふたりきりでいること自体、嫌だった。




疲れてんのに・・・・・・



早く直と風呂入りたいよ。






「吉田・・・・・・だよな?」



「え?」





俺は覚えていない。



でも、この際それは言わないでおこう。








「どこかで会ったことあると思ったんだけど・・・・・・俺のこと知ってるんじゃない?」





急にあたふたし始めた。



田辺は、目をそらし、手に持った車のキーを触る。





「あ、あの・・・・・・え?」




「どうして、知らないフリをしたんだ?」





ついつい教師モードになってしまって、敬語じゃなくなった俺。






「俺のことを詮索したり、俺に車の修理を頼んだり、駅まで送って欲しいと言ったりするのは、どうしてなのか教えて欲しい。隣に住んでいるのが俺じゃなくても、同じことをするのか?」





怒りが込み上げてくる。