私は、そのキスで田辺さんのことを話そうと思えたんだ。



だって。



先生の性格わかってるもん。




先生を心配して私が我慢していると知ったら、絶対怒る。




“何でも俺に言えって言っただろ”って。





だから、ちゃんと話す。



夫婦だから。




小さな悩みかもしれないけど、私にとっては大きい。







「今日も来たの。田辺さん」





食事が終わってから、話し始めた。





「またぁ?何の用?」




「虫が出たから、ご主人が帰ってたら退治してもらいたいって」





先生は、大きなため息をついて、呆れた顔をした。




そして、向かい合って座っている私の手に手を乗せる。





「嫌な想いしただろ。なんか・・・・・・ごめん」





「先生が悪いわけじゃないよ。ちょっと変わった人なだけかも」






先生のことを知っている人なのか、そうじゃないのか、それすらわからない。




本人に聞くしかもう方法はない。