そいつは、薄汚れたボロボロの着物を着て、体からも変な臭いを漂わせていた。


風呂に入っていないのか?


着物も洗濯していないのか?


俺は少し、近付くのをためらった。


使用人頭の辰吉(たつきち)が、いつもの笑顔でそいつを俺に紹介してくれた。


「若様。
新入りを紹介します。」


辰吉は何歳くらいなんだろう。


俺の目から見たら、かなりの爺さんだったけど、シッカリ者で信頼できる使用人だった。


辰吉はそいつの肩に両手を置いて、俺の方に押し出すように歩かせた。