手に力を入れると手紙がクシャッと形を変える。


こんな手紙読む訳ない。どうせ何かを期待して開いても私が望むものはもうこの世界のどこにもないのだから。


すると、ナツメの表情が一気に変わった。



『宜しいのですか?それで』


全てを見透かされてるような瞳に私は直視出来ない。


『なにが?』


強い口調で言い返すと、私はある事に気付いた。それは私を見る人達の視線。

何かおかしなものを見ているかのように、ジロジロと好奇の目が向けられている。


-------------なに?なんなの?




『わたくしの姿は他の人には見えません。常世から手紙を預かり、その受け取り人の方しか手紙屋の姿は見えないのです』


信じられない話だけど周りの人達の視線は本物。


それじゃ、本当に私以外の人には見えてないの?それなら私が独り言を言っているように見えてるって事?



『長谷川様、宜しければ場所を移動しませんか?』