白い便箋には開かないように封蝋(ふうろう)が刻印されていた。それは赤い蝋に天使の羽の模様。

まるで外国からの手紙のみたいで受けとる気にはなれない。それに------------、



『あなた誰なんですか?一体何が目的で……』


私の名前も彼の名前も何故か知られている。


少年はニコリと微笑み被っていた制帽を取った。その顔は思ったより幼くて、喋る口調と一致しない。



『改めまして、わたくし手紙屋の072X。名をナツメと申します。常世から預かりし手紙を現世の者に届けるのが仕事でございます』


常世(とこよ)?現世(うつしよ)?

普段聞かない言葉だらけで訳が分からない。


もしかして新手の詐欺師とか?でも女子高生の私にそんな事する利益がない。

色々と頭で考えてる中、ナツメが制帽を被り直した。



『ですから、條原様から長谷川様へ。常世からお手紙を預かりましたので受け取っていただけますか?』


常世の意味は分からない。でも私の予想が合っているなら恐らく………。

私は激しく鼓動する心音を必死に隠して、手紙を払いのけた。



『そんなの私は信じない。誰かを騙したいなら他あたって下さい』


そう言って、その場から立ち去った。