蝶のように舞い、時折晴明と道長に目を遣っては微笑んで扇子で顔を隠す。
晴明が主さまが隣に居るということを強調するために湯呑を置き、
だから息吹が何度も何度もこちらに向かって笑いかけてくれるので、主さまの心も和んで、鈴の音を鳴らしながら舞う息吹をじっと見つめていた。
「素晴らしかったよ。もうどこへ嫁に出してもおかしくはないな」
主さまが無言で晴明を睨んだが、相変わらずどこ吹く風で息吹の手を引いて座らせると、また息吹も唇を尖らせて首を振った。
「まだお嫁には行きたくありません。父様、私がお嫁に行く時はどうか好きな方の元へ嫁がせて下さい」
「おや、好きな男が居るのか?」
「まだ居ません。でも…心の通じた方と一緒になりたいと思うのは自然でしょう?」
「そなたをしっかり守ってくれる心の広い男であれば私は何も言わないよ」
――道長の顔がみるみる赤くなり、主さまの顔はみるみる不機嫌になった。
息吹は人間だから、人間の男に嫁がせるのは自然なこと。
だが主さまの魂は、それを許さない。
「…」
「……ああそうだ、実は平安町に巻物を頼んであるんだが私は手が外せなくてね、息吹に取りに行ってもらいたいんだが」
まだ1度しか平安町へ出たことのない息吹の顔がぱっと明るくなり、道長が“自分が同伴だ”と言わんばかりに腰を上げようとしたが、
晴明は扇子で膝を叩きながら勇み足の道長の心を折った。
「十六夜と2人で行って来なさい。多少なら遅くなっても構わないよ」
「!はい!父様ありがとう!私、準備してきます!」
明らかにがっかりした道長が庭に下りて池の人魚にからかわれ、主さまは湯呑を口に運びながら晴明を睨んだ。
「どういうつもりだ」
「息吹と2人きりになれるのだぞ、嬉しくないのか?」
「…だからどういうつもりだと聞いている」
「いつ嫁いでもおかしくないのは事実だ。それまではそなたとの時間を作ってやりたいという私の優しさだよ」
――晴明が紙の上で息吹と会話を交わしていることを知っているかはわからなかったが、息吹を独占できる。
仕方ないと言う表情を作りながら腰を上げた。
晴明が主さまが隣に居るということを強調するために湯呑を置き、
だから息吹が何度も何度もこちらに向かって笑いかけてくれるので、主さまの心も和んで、鈴の音を鳴らしながら舞う息吹をじっと見つめていた。
「素晴らしかったよ。もうどこへ嫁に出してもおかしくはないな」
主さまが無言で晴明を睨んだが、相変わらずどこ吹く風で息吹の手を引いて座らせると、また息吹も唇を尖らせて首を振った。
「まだお嫁には行きたくありません。父様、私がお嫁に行く時はどうか好きな方の元へ嫁がせて下さい」
「おや、好きな男が居るのか?」
「まだ居ません。でも…心の通じた方と一緒になりたいと思うのは自然でしょう?」
「そなたをしっかり守ってくれる心の広い男であれば私は何も言わないよ」
――道長の顔がみるみる赤くなり、主さまの顔はみるみる不機嫌になった。
息吹は人間だから、人間の男に嫁がせるのは自然なこと。
だが主さまの魂は、それを許さない。
「…」
「……ああそうだ、実は平安町に巻物を頼んであるんだが私は手が外せなくてね、息吹に取りに行ってもらいたいんだが」
まだ1度しか平安町へ出たことのない息吹の顔がぱっと明るくなり、道長が“自分が同伴だ”と言わんばかりに腰を上げようとしたが、
晴明は扇子で膝を叩きながら勇み足の道長の心を折った。
「十六夜と2人で行って来なさい。多少なら遅くなっても構わないよ」
「!はい!父様ありがとう!私、準備してきます!」
明らかにがっかりした道長が庭に下りて池の人魚にからかわれ、主さまは湯呑を口に運びながら晴明を睨んだ。
「どういうつもりだ」
「息吹と2人きりになれるのだぞ、嬉しくないのか?」
「…だからどういうつもりだと聞いている」
「いつ嫁いでもおかしくないのは事実だ。それまではそなたとの時間を作ってやりたいという私の優しさだよ」
――晴明が紙の上で息吹と会話を交わしていることを知っているかはわからなかったが、息吹を独占できる。
仕方ないと言う表情を作りながら腰を上げた。

