まさかの2度目の夢落ちに、主さまは乱暴に障子を開けて外に出た。
「ぬ、主さま?」
声をかけて起こしたのは山姫でそれはいつもの日課だったのだが…
最高に幸せな夢を見ていて、しかも細部に至るまで鮮明に夢の内容を覚えている主さまの顔は…寝室に入る前よりも、赤かった。
「…行くぞ!」
「は、はい」
大物小物、大小様々な百鬼たちが列を成して百鬼夜行はいつものように始まったのだが…
最初から最後までずっと黙りっぱなしだったのは主さまで、もしかしたら息吹をあんな風にしたいと思っているのは自分だけではないかもしれないと思い、まず頭に浮かんだのは道長だったが…
「…あの男は晴明の友人だったから後回しにしてやる」
そうだ、一条天皇に脅しをかけに行ってやろう。
――恙なく百鬼夜行が終了して百鬼たちがそれぞれのねぐらに帰ると、共に同じ屋敷に住んでいる雪男と山姫に端的に告げた。
「御所に行って来る」
「え?主さま…まだ夜も明けて…」
内容を告げずに姿をふっと消して、幽玄橋を通らずに空を駆けて御所の真上に着くとそこには晴明の張った結界が御所を中心に球状に覆われていた。
「こんな子供騙しの術で俺を阻めるものか」
透明な膜に触れると僅かに身体が痺れたが、結界を破ったことは晴明も気付いているだろう。
別に怒られても怖くはないし、そのまま姿を消して帝の寝所に入り込むと…ちょうど女御が退出する所だった。
…その女御がどこか息吹に似ていて、主さまが失笑しながら眠りについている帝の枕元に立とうとすると、
机の上に1通の文が置いてあり、見てみると…それは息吹宛ての、愛の言葉を綴った文だった。
「…性懲りもない」
そして主さまが枕元に立ち、文を短刀で串刺しにすると枕元の畳に突き立てて、ぼそりと囁いた。
「息吹似の女を抱いて満足したか?お前にはそれが似合いだ、もう息吹には手を出すな…。手を出せば時間をかけていたぶって殺してやる」
「うぅ…」
急に呻きだしてうなされる帝から離れると、悠々と御所を出た。
とりあえず鬱憤をこれで解消できて、目下はあの夢をどう忘れるか…
それが悩みの種。
「ぬ、主さま?」
声をかけて起こしたのは山姫でそれはいつもの日課だったのだが…
最高に幸せな夢を見ていて、しかも細部に至るまで鮮明に夢の内容を覚えている主さまの顔は…寝室に入る前よりも、赤かった。
「…行くぞ!」
「は、はい」
大物小物、大小様々な百鬼たちが列を成して百鬼夜行はいつものように始まったのだが…
最初から最後までずっと黙りっぱなしだったのは主さまで、もしかしたら息吹をあんな風にしたいと思っているのは自分だけではないかもしれないと思い、まず頭に浮かんだのは道長だったが…
「…あの男は晴明の友人だったから後回しにしてやる」
そうだ、一条天皇に脅しをかけに行ってやろう。
――恙なく百鬼夜行が終了して百鬼たちがそれぞれのねぐらに帰ると、共に同じ屋敷に住んでいる雪男と山姫に端的に告げた。
「御所に行って来る」
「え?主さま…まだ夜も明けて…」
内容を告げずに姿をふっと消して、幽玄橋を通らずに空を駆けて御所の真上に着くとそこには晴明の張った結界が御所を中心に球状に覆われていた。
「こんな子供騙しの術で俺を阻めるものか」
透明な膜に触れると僅かに身体が痺れたが、結界を破ったことは晴明も気付いているだろう。
別に怒られても怖くはないし、そのまま姿を消して帝の寝所に入り込むと…ちょうど女御が退出する所だった。
…その女御がどこか息吹に似ていて、主さまが失笑しながら眠りについている帝の枕元に立とうとすると、
机の上に1通の文が置いてあり、見てみると…それは息吹宛ての、愛の言葉を綴った文だった。
「…性懲りもない」
そして主さまが枕元に立ち、文を短刀で串刺しにすると枕元の畳に突き立てて、ぼそりと囁いた。
「息吹似の女を抱いて満足したか?お前にはそれが似合いだ、もう息吹には手を出すな…。手を出せば時間をかけていたぶって殺してやる」
「うぅ…」
急に呻きだしてうなされる帝から離れると、悠々と御所を出た。
とりあえず鬱憤をこれで解消できて、目下はあの夢をどう忘れるか…
それが悩みの種。

