触れた息吹の唇はやわらかくて…
もちろん今まで何度も、女とは戯れに唇を重ねたこともあったが…
息吹との口づけは主さまを激しく昂らせて、間近で見た睫毛の長さに驚嘆しながらも、少し強く唇を押し付けた。
すると息吹の眉が動き、はっとなって我に返り、ゆっくりと瞳が開いて姿を見られそうになったので慌ててまた術で姿を消した。
どくどくと高鳴る胸を押さえながら後ずさりをすると、息吹がむくりと起き上がった。
「…私…寝ちゃってたんだ…」
寝起きのぼうっとした表情で部屋の中をぐるりと見回し…そして、指で唇に触れると…ぼんやりしていた。
「十六夜さん?居るの?」
「……」
答えないでいるとそのまま起き上がって廊下を歩き、晴明の部屋の前で座ると声をかけようとして、あちらから声をかけられた。
「息吹?」
「父様…なんか目が覚めちゃって…」
――まだ唇を触っている息吹と、傍らで顔を赤くして息吹の背後でうろうろしている主さまを見て、晴明がぴんときてにやりと笑った。
「まあここに座りなさい。妙な夢でも見たのかい?」
「あんまり覚えてないけど…幽玄町のみんなと一緒に居る夢を見ました。十六夜さんは?」
「十六夜?あれは夜はここには居ないよ。…会いたいのかい?」
息吹がふっと笑って首を振り、晴明の手をきゅっと握ると瞳を輝かせた。
「会ってみたいけど、いいんです。傍に居てくれる時は何となくわかるから」
「そうかい?ではまだ眠たくないのなら私の仕事を手伝っておくれ」
「はい」
散らばった巻物を息吹が丸めている間に晴明が目配せをしてきて、まるで先程の出来事を全て知っているかのように見透かされた瞳で見られたので、
腕で顔を隠しながら主さまは庭に下りて、晴明の屋敷を飛び出した。
「くそ…っ、俺は息吹に何故あんなことを…」
とにかく触れたくて、
“主さま”と昔のように呼ばれたことが嬉しくて、
主さまの顔はさらに赤くなり続けて、幽玄橋の赤鬼と青鬼から顔を覗き込まれた。
「主さま?お顔が…」
「う、うるさい!」
存外に、照れ屋だった。
もちろん今まで何度も、女とは戯れに唇を重ねたこともあったが…
息吹との口づけは主さまを激しく昂らせて、間近で見た睫毛の長さに驚嘆しながらも、少し強く唇を押し付けた。
すると息吹の眉が動き、はっとなって我に返り、ゆっくりと瞳が開いて姿を見られそうになったので慌ててまた術で姿を消した。
どくどくと高鳴る胸を押さえながら後ずさりをすると、息吹がむくりと起き上がった。
「…私…寝ちゃってたんだ…」
寝起きのぼうっとした表情で部屋の中をぐるりと見回し…そして、指で唇に触れると…ぼんやりしていた。
「十六夜さん?居るの?」
「……」
答えないでいるとそのまま起き上がって廊下を歩き、晴明の部屋の前で座ると声をかけようとして、あちらから声をかけられた。
「息吹?」
「父様…なんか目が覚めちゃって…」
――まだ唇を触っている息吹と、傍らで顔を赤くして息吹の背後でうろうろしている主さまを見て、晴明がぴんときてにやりと笑った。
「まあここに座りなさい。妙な夢でも見たのかい?」
「あんまり覚えてないけど…幽玄町のみんなと一緒に居る夢を見ました。十六夜さんは?」
「十六夜?あれは夜はここには居ないよ。…会いたいのかい?」
息吹がふっと笑って首を振り、晴明の手をきゅっと握ると瞳を輝かせた。
「会ってみたいけど、いいんです。傍に居てくれる時は何となくわかるから」
「そうかい?ではまだ眠たくないのなら私の仕事を手伝っておくれ」
「はい」
散らばった巻物を息吹が丸めている間に晴明が目配せをしてきて、まるで先程の出来事を全て知っているかのように見透かされた瞳で見られたので、
腕で顔を隠しながら主さまは庭に下りて、晴明の屋敷を飛び出した。
「くそ…っ、俺は息吹に何故あんなことを…」
とにかく触れたくて、
“主さま”と昔のように呼ばれたことが嬉しくて、
主さまの顔はさらに赤くなり続けて、幽玄橋の赤鬼と青鬼から顔を覗き込まれた。
「主さま?お顔が…」
「う、うるさい!」
存外に、照れ屋だった。

