百鬼夜行とは元々は地方の妖をも牽制するためのもので、
主さまの許可なく悪さを働く妖たちを見つけて懲らしめるための百鬼夜行でもある。
その日の主さまには鬼気迫るものがあり、6年前息吹を失ってからこっち、あまり覇気のなかった主さまだったが、今日の主さまは“一生主さまについて行く!”と思わせる何かがあった。
「山姫、早朝俺を起こせ。絶対だぞ」
「でも主さま…起こすと機嫌が悪いじゃないですか。私はまだ死にたくありませんよ」
「…怒らないと誓う。だから絶対に起こせ。わかったな?」
「あいよ」
――実は山姫に対して主さまは軽く嫉妬していた。
山姫は息吹から“母様”と呼ばれたが…自分は“主さま”としか呼ばれなかった。
「…俺が父代わりとして育ててやったのに恩知らずな奴だ」
寝室に入って、山姫が入れてくれた酒を飲みながら息吹が描いた絵を鑑賞する。
それは見事に酒の肴としての効果を発揮し、いい気分になりながら横になって瞳を閉じる。
…こんな風に、息吹に心を独占されてしまうとは――
一緒に風呂も入れてやったし着替えもさせてやったし…裸など、幾度となく見てきたのに…
「…急に暑くなってきたな…」
どうしたことか、今の息吹に同じことをしてやっている自分の姿を想像してしまった主さまは身体が熱くなってきて、
がりがりと髪をかき上げながらやるせないため息をついた。
「変な想像をするな!あれは…俺の“女”なんかじゃない!俺はあれを取り戻したいだけだ!」
自分に言い聞かせてみるが、それは一向に効力を発揮せず。
息吹に目を奪われている自分を自覚していつつも、傍に置いてしまえば一体どんなことをしでかしてしまうかを想像して、また赤面。
「ああ俺は…一体どうしてしまったんだ…」
ただひとつわかっていることは――
人間が作り出す魑魅魍魎のはびこる朝廷に息吹を住まわせるわけにはいかない。
なんなら従えている妖すべてを駆り出して、襲撃してやってもいい。
こちらを討つふりをして清明と戦う真似事をするのも面白いだろう。
「…息吹に触れたい」
願いを口にする。
主さまの許可なく悪さを働く妖たちを見つけて懲らしめるための百鬼夜行でもある。
その日の主さまには鬼気迫るものがあり、6年前息吹を失ってからこっち、あまり覇気のなかった主さまだったが、今日の主さまは“一生主さまについて行く!”と思わせる何かがあった。
「山姫、早朝俺を起こせ。絶対だぞ」
「でも主さま…起こすと機嫌が悪いじゃないですか。私はまだ死にたくありませんよ」
「…怒らないと誓う。だから絶対に起こせ。わかったな?」
「あいよ」
――実は山姫に対して主さまは軽く嫉妬していた。
山姫は息吹から“母様”と呼ばれたが…自分は“主さま”としか呼ばれなかった。
「…俺が父代わりとして育ててやったのに恩知らずな奴だ」
寝室に入って、山姫が入れてくれた酒を飲みながら息吹が描いた絵を鑑賞する。
それは見事に酒の肴としての効果を発揮し、いい気分になりながら横になって瞳を閉じる。
…こんな風に、息吹に心を独占されてしまうとは――
一緒に風呂も入れてやったし着替えもさせてやったし…裸など、幾度となく見てきたのに…
「…急に暑くなってきたな…」
どうしたことか、今の息吹に同じことをしてやっている自分の姿を想像してしまった主さまは身体が熱くなってきて、
がりがりと髪をかき上げながらやるせないため息をついた。
「変な想像をするな!あれは…俺の“女”なんかじゃない!俺はあれを取り戻したいだけだ!」
自分に言い聞かせてみるが、それは一向に効力を発揮せず。
息吹に目を奪われている自分を自覚していつつも、傍に置いてしまえば一体どんなことをしでかしてしまうかを想像して、また赤面。
「ああ俺は…一体どうしてしまったんだ…」
ただひとつわかっていることは――
人間が作り出す魑魅魍魎のはびこる朝廷に息吹を住まわせるわけにはいかない。
なんなら従えている妖すべてを駆り出して、襲撃してやってもいい。
こちらを討つふりをして清明と戦う真似事をするのも面白いだろう。
「…息吹に触れたい」
願いを口にする。

