主さまが屋敷に戻ると…
一旦解散したはずの百鬼たちがまた再集結していて、その中心には山姫と雪男が居た。
「息吹は綺麗になっていてねえ…あんたたちにも見せてやりたかったよ」
「山姫と雪男だけ会いに行ったなんてずるいぞ!」
「そうだそうだ!」
「また息吹を背に乗せて飛んでやりたいなあ。よく俺の尻尾を掴んで遊んでいたのが懐かしい」
頭は猿、身体は狸で手足が虎、尻尾が蛇の鵺(ぬえ)という妖がため息をもらし、猫又も負けじと尻尾を振りながら応戦した。
「息吹は僕と遊んでる時が1番楽しそうにしてたにゃ!」
「嘘つけ、俺だ!」
わいわいと騒がしく、相変わらずの息吹贔屓の百鬼たちはなかなか主さまに気付かずに、主さまがわざとした咳払いでようやく静かになった。
「主さま、お帰りなさいまし。皆に息吹のことを教えてやっていたんですよ」
「お前たち…今後も息吹に会おうとは思うなよ。あれは俺が守る。だから心配するな」
――1番息吹贔屓なのはもちろん主さまで、一言そう告げると寝室に入ってしまい、皆が声を潜めながら主さまの変化を口にした。
「どうしたんだ?やけに嬉しそうだったが…」
「明日は1日息吹を守るために朝廷へ行くんだよ。羨ましいことだ、私も行きたかった」
「お、俺も…」
ようやく雪男が口を開き、この男が息吹に惚れてしまっていることに気付いている山姫は同情するようなため息をついて肩を叩いた。
「よしときなって、息吹は主さまの女なんだから。何ならあたしが忘れさせてやろうか?」
「いいぞいいぞ、やれやれ!」
茶化されて猛烈に恥ずかしくなった雪男が脱兎の如く大広間から脱出し、皆の笑い声が木霊する。
…全員がまるで息吹を取り戻したかのような気分になって騒いでいる様子は、寝室の主さまにも聞こえていた。
「俺の…女だと…!?」
ちゃっかりそれも聴こえていて、
息吹を組み敷いている姿を想像してしまった主さまは…
両手で顔を覆いながら、声を押し殺した。
「そうだったら…どんなに良かったか…」
息吹には、指1本触れさせない。
絶対に――
一旦解散したはずの百鬼たちがまた再集結していて、その中心には山姫と雪男が居た。
「息吹は綺麗になっていてねえ…あんたたちにも見せてやりたかったよ」
「山姫と雪男だけ会いに行ったなんてずるいぞ!」
「そうだそうだ!」
「また息吹を背に乗せて飛んでやりたいなあ。よく俺の尻尾を掴んで遊んでいたのが懐かしい」
頭は猿、身体は狸で手足が虎、尻尾が蛇の鵺(ぬえ)という妖がため息をもらし、猫又も負けじと尻尾を振りながら応戦した。
「息吹は僕と遊んでる時が1番楽しそうにしてたにゃ!」
「嘘つけ、俺だ!」
わいわいと騒がしく、相変わらずの息吹贔屓の百鬼たちはなかなか主さまに気付かずに、主さまがわざとした咳払いでようやく静かになった。
「主さま、お帰りなさいまし。皆に息吹のことを教えてやっていたんですよ」
「お前たち…今後も息吹に会おうとは思うなよ。あれは俺が守る。だから心配するな」
――1番息吹贔屓なのはもちろん主さまで、一言そう告げると寝室に入ってしまい、皆が声を潜めながら主さまの変化を口にした。
「どうしたんだ?やけに嬉しそうだったが…」
「明日は1日息吹を守るために朝廷へ行くんだよ。羨ましいことだ、私も行きたかった」
「お、俺も…」
ようやく雪男が口を開き、この男が息吹に惚れてしまっていることに気付いている山姫は同情するようなため息をついて肩を叩いた。
「よしときなって、息吹は主さまの女なんだから。何ならあたしが忘れさせてやろうか?」
「いいぞいいぞ、やれやれ!」
茶化されて猛烈に恥ずかしくなった雪男が脱兎の如く大広間から脱出し、皆の笑い声が木霊する。
…全員がまるで息吹を取り戻したかのような気分になって騒いでいる様子は、寝室の主さまにも聞こえていた。
「俺の…女だと…!?」
ちゃっかりそれも聴こえていて、
息吹を組み敷いている姿を想像してしまった主さまは…
両手で顔を覆いながら、声を押し殺した。
「そうだったら…どんなに良かったか…」
息吹には、指1本触れさせない。
絶対に――

