「うぉおおお、俺たちの息吹がとうとう主さまの嫁になるのか!なんとめでたい!」
「…お前たちの息吹じゃない」
「息吹はここに住むにゃっ?ずっとここに住むにゃっ?!」
幽玄町に戻って来た主さまは朝にも関わらず百鬼を招集して明日正式に息吹と夫婦になることを告げた。
嬉しさを爆発させた百鬼たちは大声を上げて喜び、すでにちょっとした祭りのような状態になってしまったが、それを咎める気にもなれない。
…何せ無表情で平静を装っているかに見える主さま自身こそが、内心1番喜んでいるのだから。
「結納がてら準備するものが沢山あるんだ。あんたたちにも手伝ってもらうからね」
「あら、その必要はなさそうよ」
「…なに?」
地下室の氷室から戻って来た雪女が玄関を指すと、そこには何故か行列が。
常日頃、幽玄町に住む人々であっても主さまの屋敷の近くに寄りつくことはなく、今まで人の訪問を受けたこともない。
何事かとわいわい皆で玄関へ行くと…人々の手には、新鮮な鯛や細やかな細工を施された簪や着物や調度類などが並べられていて、主さまは思わず眉をひそめた。
「…どういうことだ」
「あ、あのっ、主さまが奥方をお迎えになると聴いて…その…俺たちからお祝いの品をお持ちしました!」
――主さまは百鬼を率いて各地で悪行を為す妖たちを調伏する者。
人が悪事を働けば百鬼に食われてしまうが、正しい生活を送っていれば彼らから食われることはまずない。
また人である女を妻に迎える主さまに好感を覚えた者が爆発的に増えて、主さまの屋敷の前には長い行列ができていた。
「あと赤鬼と青鬼からの報告ですけど、幽玄橋の向こうの平安町側で場所取りが始まっているらしいんですよ。主さま、いよいよですね」
贈り物を持ってきた人々をわいわい言いながら取り囲んだ百鬼たちだったが、主さまから常日頃口をすっぱくして“人を襲うな”と言われているので彼らを襲うことなく、贈り物を興味深げに眺めながらまた嬉しさを爆発させた。
「俺たちずっと息吹と居られるんだ!主さま、離縁なんかしたら絶対許さねえからな!」
「うるさい。離縁などするものか」
「息吹から見放されないようにしっかりしてくれよ!」
「…うるさい」
主さまもまた人々に姿を見せる機会はほとんどなかったが、贈り物を持ってきた人々に不器用な笑顔を作って笑いかけた。
「…ありがたい。明日はお前たちも参加してくれ」
「!はい!」
人と妖が、輪になる。
「…お前たちの息吹じゃない」
「息吹はここに住むにゃっ?ずっとここに住むにゃっ?!」
幽玄町に戻って来た主さまは朝にも関わらず百鬼を招集して明日正式に息吹と夫婦になることを告げた。
嬉しさを爆発させた百鬼たちは大声を上げて喜び、すでにちょっとした祭りのような状態になってしまったが、それを咎める気にもなれない。
…何せ無表情で平静を装っているかに見える主さま自身こそが、内心1番喜んでいるのだから。
「結納がてら準備するものが沢山あるんだ。あんたたちにも手伝ってもらうからね」
「あら、その必要はなさそうよ」
「…なに?」
地下室の氷室から戻って来た雪女が玄関を指すと、そこには何故か行列が。
常日頃、幽玄町に住む人々であっても主さまの屋敷の近くに寄りつくことはなく、今まで人の訪問を受けたこともない。
何事かとわいわい皆で玄関へ行くと…人々の手には、新鮮な鯛や細やかな細工を施された簪や着物や調度類などが並べられていて、主さまは思わず眉をひそめた。
「…どういうことだ」
「あ、あのっ、主さまが奥方をお迎えになると聴いて…その…俺たちからお祝いの品をお持ちしました!」
――主さまは百鬼を率いて各地で悪行を為す妖たちを調伏する者。
人が悪事を働けば百鬼に食われてしまうが、正しい生活を送っていれば彼らから食われることはまずない。
また人である女を妻に迎える主さまに好感を覚えた者が爆発的に増えて、主さまの屋敷の前には長い行列ができていた。
「あと赤鬼と青鬼からの報告ですけど、幽玄橋の向こうの平安町側で場所取りが始まっているらしいんですよ。主さま、いよいよですね」
贈り物を持ってきた人々をわいわい言いながら取り囲んだ百鬼たちだったが、主さまから常日頃口をすっぱくして“人を襲うな”と言われているので彼らを襲うことなく、贈り物を興味深げに眺めながらまた嬉しさを爆発させた。
「俺たちずっと息吹と居られるんだ!主さま、離縁なんかしたら絶対許さねえからな!」
「うるさい。離縁などするものか」
「息吹から見放されないようにしっかりしてくれよ!」
「…うるさい」
主さまもまた人々に姿を見せる機会はほとんどなかったが、贈り物を持ってきた人々に不器用な笑顔を作って笑いかけた。
「…ありがたい。明日はお前たちも参加してくれ」
「!はい!」
人と妖が、輪になる。

