まさか本当に明け方まで愛されるとは――
くたくたになった息吹はだんだん白みかけてきた空を風呂場の窓から見ていた。
「主さまって…細いのに体力あるんだね…。私もうくたくた…」
「…わ、悪かった。つい夢中になって…」
息吹を背中から抱きしめて一緒に浴槽に浸かっていた主さまがどもると、息吹は主さまの骨張った指に指を絡めて身体を預けると、あたたかいお湯に気持ちよさげな息をついた。
「このまま…寝ちゃいそう…」
「…俺も眠たい。一緒に寝るか」
「!また助平なことするんじゃ…」
「…し、しない。湯あたりするぞ、上がろう」
相変わらず直視せずに視線を逸らしたまま大きな手拭いを息吹の身体に巻き付けて先に風呂場から出すと、少しだけ1人の時間を作って幸せを噛み締めた。
…抱いてしまえば、もっと可愛く見える。
いつか子が出来て、男の子だった場合…父がしたように百鬼夜行の何たるかを子に伝授して、息吹と一緒に隠居生活を送るのが次の夢だ。
「隠居、か」
思えば父からは幼い頃からからかわれ続けて育ったが、百鬼夜行が関わる話になると途端に表情を引き締めてまともな父になっていた。
妖の中でも悠久の時より存在する純血の鬼族として生まれた宿命から逃れることはできずにその跡を継いだが…
「主さま、まだ?」
「もう出る」
外で待ってくれていたのか息吹が声をかけてきたので、身体を拭いて着物を着た主さまが風呂場を出ると、湯上りで肌が桃色になった息吹にまたどきっとしつつ肩を並べて部屋に戻ると、途端に睡魔が襲ってきた。
「…床はひとつでいいな?」
「う、うん。絶対ぜーったい助平なことしないでね」
「…お前は俺を助平扱いしすぎだ」
主さまが横になるとすぐ息吹も腕の中に転がり込んできて、あっという間に寝息が聴こえてきた。
…息吹は百鬼夜行から戻って来た自分を起きて待ってくれる、と言ってくれたが、それは容易なことではない。
またそれに不満を言うつもりもないし、こうして寝顔を毎日見れるだけでも十分幸せだと感じるのだろう。
「…なかなか美味かったぞ」
眠っている息吹の耳元でこそっと囁いた主さまもまた眠りに落ちて、晴明が戻って来るまで熟睡していた。
くたくたになった息吹はだんだん白みかけてきた空を風呂場の窓から見ていた。
「主さまって…細いのに体力あるんだね…。私もうくたくた…」
「…わ、悪かった。つい夢中になって…」
息吹を背中から抱きしめて一緒に浴槽に浸かっていた主さまがどもると、息吹は主さまの骨張った指に指を絡めて身体を預けると、あたたかいお湯に気持ちよさげな息をついた。
「このまま…寝ちゃいそう…」
「…俺も眠たい。一緒に寝るか」
「!また助平なことするんじゃ…」
「…し、しない。湯あたりするぞ、上がろう」
相変わらず直視せずに視線を逸らしたまま大きな手拭いを息吹の身体に巻き付けて先に風呂場から出すと、少しだけ1人の時間を作って幸せを噛み締めた。
…抱いてしまえば、もっと可愛く見える。
いつか子が出来て、男の子だった場合…父がしたように百鬼夜行の何たるかを子に伝授して、息吹と一緒に隠居生活を送るのが次の夢だ。
「隠居、か」
思えば父からは幼い頃からからかわれ続けて育ったが、百鬼夜行が関わる話になると途端に表情を引き締めてまともな父になっていた。
妖の中でも悠久の時より存在する純血の鬼族として生まれた宿命から逃れることはできずにその跡を継いだが…
「主さま、まだ?」
「もう出る」
外で待ってくれていたのか息吹が声をかけてきたので、身体を拭いて着物を着た主さまが風呂場を出ると、湯上りで肌が桃色になった息吹にまたどきっとしつつ肩を並べて部屋に戻ると、途端に睡魔が襲ってきた。
「…床はひとつでいいな?」
「う、うん。絶対ぜーったい助平なことしないでね」
「…お前は俺を助平扱いしすぎだ」
主さまが横になるとすぐ息吹も腕の中に転がり込んできて、あっという間に寝息が聴こえてきた。
…息吹は百鬼夜行から戻って来た自分を起きて待ってくれる、と言ってくれたが、それは容易なことではない。
またそれに不満を言うつもりもないし、こうして寝顔を毎日見れるだけでも十分幸せだと感じるのだろう。
「…なかなか美味かったぞ」
眠っている息吹の耳元でこそっと囁いた主さまもまた眠りに落ちて、晴明が戻って来るまで熟睡していた。

