息吹が独占欲を抱いてくれている――
そうわかった途端、もう自身を止められないでいた主さまは、息吹の髪紐を解いて、身体に埋め込むようにして息吹を抱きしめ続けた。
「浮気なんかしない。第一俺はそんなに器用じゃないからな」
「うん…知ってるけど…でも絡新婦さんみたいな綺麗な妖がもっと沢山居るんでしょ?私が逆立ちしたって適わない位綺麗な妖がもっと…」
「俺はお前を選んだ。お前が人だったとしてもお前しか考えられなかった。…俺の想いを疑うな。俺は必ずお前の元に戻って来る。生涯ずっとだ」
「主さま…」
主さまが一瞬瞳を閉じると、部屋の隅に置いていた灯篭の灯りが消えた。
代りに主さまの瞳の中に蒼白い炎が燈り、息吹は鼻をぐすぐす言わせながら主さまの頬に触れて、その炎に魅入った。
「綺麗…」
「…ようやくこの時が来た。…怖いんだろう?…俺が怖いか?」
「怖いよ…だって私…なんにも知らないんだもん…。さっき『源氏の物語』を読んだけどさっぱりわかんなくて…」
「…あれを参考にするな。いきなりあんな風にはしない」
部屋が暗くなったっことで余計に緊張が増したのか、息吹の身体は小刻みに震えていて、無限の愛しさが溢れ出して止まらなくなった主さまは、なんとか時間をかけて息吹の緊張を解してやろうと思っていたのだが…気が昂って気持ちが逸る。
現に意志とは裏腹に手は息吹の浴衣の帯を外しにかかっていて、震える息をついた主さまは俯いている息吹に弱音を吐いた。
「ずっとこの日を待っていた。だが…実際は指が震えて言うことを利かない。怖いだろうが、俺を受け入れてくれ。息吹…お前を…あ、愛している」
「主さま…嬉しい…」
…肝心な所で噛んでしまったが、主さまに大切にされている…という実感が沸いた息吹は、主さまの腕に身を委ねて瞳を閉じた。
「もう怖がったりしない。主さ…、十六夜さん…私もあなたのことが好き。大好き。…あ、愛してます」
「…息吹…」
また息吹も肝心な所で噛んでしまったが、それで互いに緊張が解れて笑い合うと、息吹を抱っこして床の上に下ろした主さまは、鈴を息吹の手に握らせてとろけるような深い口づけを交わした。
「お前を食う」
息吹がゆっくり頷いた。
そうわかった途端、もう自身を止められないでいた主さまは、息吹の髪紐を解いて、身体に埋め込むようにして息吹を抱きしめ続けた。
「浮気なんかしない。第一俺はそんなに器用じゃないからな」
「うん…知ってるけど…でも絡新婦さんみたいな綺麗な妖がもっと沢山居るんでしょ?私が逆立ちしたって適わない位綺麗な妖がもっと…」
「俺はお前を選んだ。お前が人だったとしてもお前しか考えられなかった。…俺の想いを疑うな。俺は必ずお前の元に戻って来る。生涯ずっとだ」
「主さま…」
主さまが一瞬瞳を閉じると、部屋の隅に置いていた灯篭の灯りが消えた。
代りに主さまの瞳の中に蒼白い炎が燈り、息吹は鼻をぐすぐす言わせながら主さまの頬に触れて、その炎に魅入った。
「綺麗…」
「…ようやくこの時が来た。…怖いんだろう?…俺が怖いか?」
「怖いよ…だって私…なんにも知らないんだもん…。さっき『源氏の物語』を読んだけどさっぱりわかんなくて…」
「…あれを参考にするな。いきなりあんな風にはしない」
部屋が暗くなったっことで余計に緊張が増したのか、息吹の身体は小刻みに震えていて、無限の愛しさが溢れ出して止まらなくなった主さまは、なんとか時間をかけて息吹の緊張を解してやろうと思っていたのだが…気が昂って気持ちが逸る。
現に意志とは裏腹に手は息吹の浴衣の帯を外しにかかっていて、震える息をついた主さまは俯いている息吹に弱音を吐いた。
「ずっとこの日を待っていた。だが…実際は指が震えて言うことを利かない。怖いだろうが、俺を受け入れてくれ。息吹…お前を…あ、愛している」
「主さま…嬉しい…」
…肝心な所で噛んでしまったが、主さまに大切にされている…という実感が沸いた息吹は、主さまの腕に身を委ねて瞳を閉じた。
「もう怖がったりしない。主さ…、十六夜さん…私もあなたのことが好き。大好き。…あ、愛してます」
「…息吹…」
また息吹も肝心な所で噛んでしまったが、それで互いに緊張が解れて笑い合うと、息吹を抱っこして床の上に下ろした主さまは、鈴を息吹の手に握らせてとろけるような深い口づけを交わした。
「お前を食う」
息吹がゆっくり頷いた。

