主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】

一条天皇と萌と相模の3人は、はたから見ていてまさしく家族そのものだった。


息吹としては一条天皇には怖い思い出があるので、少し離れた場所で正座をすると、一条天皇は苦笑して小さく頭を下げた。


「そなたには怖い思いをさせたこともあった…。私はあの頃心が病んでいたのだ。許してほしい」


「あ、い、いえ…、その…大丈夫です。これからは萌さんと相模を幸せにしてやって下さい」


「もちろんだ」


萌が晴明に恋心を抱いていることには薄々気づいてはいたが、やっぱり晴明と山姫に夫婦になってほしいし、晴明は萌の想いに応えることはないだろう。

現に追従するように萌に笑顔を向けた晴明は、平安町の地図を持ち出して来ると、朝廷にほど近い小さな山を指して袖を払った。


「こちらに屋敷をご用意いたしました。朝廷の立て直しには今しばらく時間がかかりますし、相模を天皇に在位させるかあなたが継続するか…その判断も追々必要になるでしょうから」


「お、俺が天皇に…!?無理だよそんなの!その…父様がこの国をきっともっと良い国にしてくれるはずだから、俺は無理!」


「相模…」


ようやく再会した親子の対面に感動した息吹が目尻に涙を溜めていると、今まで行方をくらましていた銀が奥からひょっこり姿を現した。


「銀さん!どこに行ってたのっ?」


「ずっとここに居た。面白いものも見れて楽しかったぞ」


「?」


銀が腕に抱いていた赤子を受け取った息吹があやしている最中、晴明は銀にぼそりと声をかけた。


「今夜はこの屋敷に朝まで戻るな。私も戻らぬ」


「!とうとうこの日が来たか。さぞ口惜しいだろう?」


嬉しさ全開という感じで尻尾と耳がぴょこぴょこ動きまくる銀を撫で回したくてちらちら視線を向けてくる息吹に笑いかけた銀は、声を上げて笑っている赤子の指を握った。


「まあ殺してやりたいが息吹が悲しむ故ぐっと堪えているところだ。私は私の恋を成就させるため精進するとしよう」


「生々しいからげっそりして戻って来るなよ」


軽口を叩き合っている2人に対して、息吹は何故主さまがここまで会いに来るのかを考えていたが…結局答えが見つからずに眠ってしまった赤子を抱っこすると、自室に連れて行って寝かしつけた。


「私も眠たくなっちゃった…」


そして起きた頃に――やって来た。