翌日の夜、主さまの屋敷を訪れた晴明は…あっという間に百鬼たちに囲まれてしまった。
「どの面下げてのこのこと現れやがったんだ」
「息吹はどうしてるんだ!主さまに返せ!」
――大勢の妖に取り囲まれ、目の前には黙ったままの主さまが座っている。
その横には瞬きもせずに鋭い視線で睨みつけている山姫が居て、雪男が晴明の手をひんやりと掴んだ。
「俺たちはお前がしでかしたこと、忘れてないぜ」
「まあそう息巻くのはよしなさい。息吹は元気に過ごしている。それはたいそう美しい娘になったぞ」
おお、と歓声が沸き、息吹の想像図を口にしては騒ぎ出した百鬼たちにしびれを切らした主さまが、畳に刀を突き立てた。
「…うるさいぞ。今夜の百鬼夜行は中止だ、散れ」
逆らえずに晴明を罵倒しながら皆が部屋を出て行き、残ったのは山姫と雪男と主さまだけになった。
「…お前は何をしに来た?…息吹はどこに?」
「そなたは見に来たではないか。美しかっただろう?それとも美味そうに見えたか?」
――手を伸ばせば触れる距離で息吹を見たあの時…
息吹は“食い物”ではなく、“女”に見えた。
“主さま”と名を呼ばれた時…
感じたことのない熱を覚えて、抱きしめそうになってしまった。
会いたい。
息吹に、会いたい。
「…用件を言え。今は大人しくしているが、今に連中らに襲い掛かられるぞ」
「あれしきの妖らに私が倒されるはずがない。では用件を言おう」
持参した酒をぐい、と呷り、空になった盃に並々と酒を注いで主さまに笑顔で差し出した。
「息吹を朝廷に連れて行く。一条天皇はまだ会ってもいない息吹にすでにご執心故、召し抱えられるかもしれんな」ぬ
「っ!な、に…?」
「入内だよ。私としては道長に嫁いでもらいたいんだが…おや?顔色が悪いな。どうした?」
晴明の手から盃をひったくると一気に飲み干して片膝を突き、晴明の胸元を掴んで至近距離で睨みつけた。
主さまの邪眼…誰もが逆らえない、鬼の瞳――
晴明はくらりと眩暈を感じながら、主さまの肩に手を乗せた。
「会いに来い。連れて行ってやる」
「どの面下げてのこのこと現れやがったんだ」
「息吹はどうしてるんだ!主さまに返せ!」
――大勢の妖に取り囲まれ、目の前には黙ったままの主さまが座っている。
その横には瞬きもせずに鋭い視線で睨みつけている山姫が居て、雪男が晴明の手をひんやりと掴んだ。
「俺たちはお前がしでかしたこと、忘れてないぜ」
「まあそう息巻くのはよしなさい。息吹は元気に過ごしている。それはたいそう美しい娘になったぞ」
おお、と歓声が沸き、息吹の想像図を口にしては騒ぎ出した百鬼たちにしびれを切らした主さまが、畳に刀を突き立てた。
「…うるさいぞ。今夜の百鬼夜行は中止だ、散れ」
逆らえずに晴明を罵倒しながら皆が部屋を出て行き、残ったのは山姫と雪男と主さまだけになった。
「…お前は何をしに来た?…息吹はどこに?」
「そなたは見に来たではないか。美しかっただろう?それとも美味そうに見えたか?」
――手を伸ばせば触れる距離で息吹を見たあの時…
息吹は“食い物”ではなく、“女”に見えた。
“主さま”と名を呼ばれた時…
感じたことのない熱を覚えて、抱きしめそうになってしまった。
会いたい。
息吹に、会いたい。
「…用件を言え。今は大人しくしているが、今に連中らに襲い掛かられるぞ」
「あれしきの妖らに私が倒されるはずがない。では用件を言おう」
持参した酒をぐい、と呷り、空になった盃に並々と酒を注いで主さまに笑顔で差し出した。
「息吹を朝廷に連れて行く。一条天皇はまだ会ってもいない息吹にすでにご執心故、召し抱えられるかもしれんな」ぬ
「っ!な、に…?」
「入内だよ。私としては道長に嫁いでもらいたいんだが…おや?顔色が悪いな。どうした?」
晴明の手から盃をひったくると一気に飲み干して片膝を突き、晴明の胸元を掴んで至近距離で睨みつけた。
主さまの邪眼…誰もが逆らえない、鬼の瞳――
晴明はくらりと眩暈を感じながら、主さまの肩に手を乗せた。
「会いに来い。連れて行ってやる」

