繁華街は活気に沸いていた。
だがどこか上品でいて騒がしくもなく、逆に幽玄町の繁華街はいつも笑い声や怒鳴り声で騒がしく、それを懐かしく思いながら露店を見て行く。
その中に、息吹の目に留まるものがあった。
「これ…母様が買ってくれた髪紐…」
薄桃色の髪紐。
主さまとお揃いになるようにといつも2本買って来てくれて、主さまの髪に結ぶのが日課だった。
「懐かしい…。父様、私、これが欲しいの」
「そんなのでいいのかい?もっと雅なものがあるよ」
「ううん、これがいいの。道長様、どう?可愛い?」
垂らしている長い髪を前に持ってきて髪紐をあててみて見上げると、
黙っていれば意外と男前に見える道長の顔は赤くなりながら、何とか振り絞った。
「う、うむ、可愛いぞ!」
「もっと高価なものをねだってもいいのに」
笑いながら髪紐を買ってもらい、それを手に握りしめながらまたあちこち見て回りながら歩く。
「あの髪紐、もう1本あったはずなんだけど…おかしいねえ…。あれ?」
息吹たちが見えなくなった時、店主が誰が置いて行ったかわからない金を見て納得顔で頷いた。
「あたしがよそ見してる間に誰かがあの髪紐を買って行ったんだね」
――息吹があちこち顔を出しているうちにどんどん晴明たちと離れて行ってしまい、
気が付いた時には人が居ない場所に迷い込んでしまって、そこでようやく晴明たちとはぐれたことに気が付いて方向転換しようとすると…
「どこのお姫さんだ?高価な着物着てるし…こりゃ別嬪さんだ」
「…だ、誰……?」
無精ひげを生やした屈強な男が息吹の前に立っていて、後ずさるがまた1歩詰められて、手を掴まれた。
「や、やめて下さい…っ」
「あんたは人買いに売って、その着物も売ればぼろ儲けだ!来い!」
「きゃ…っ」
口を大きな手で塞がれて大声が出せなくなり、肩に担がれようとした時…
「ぎゃっ!な、なんだ!?」
男の右手の甲がすっぱりと切れて鮮血が吹き出し、肩から降りると弾みで落とした髪紐を拾い上げ、声もなく息吹が後ずさる。
何が起きているのかわからなかった。
だがどこか上品でいて騒がしくもなく、逆に幽玄町の繁華街はいつも笑い声や怒鳴り声で騒がしく、それを懐かしく思いながら露店を見て行く。
その中に、息吹の目に留まるものがあった。
「これ…母様が買ってくれた髪紐…」
薄桃色の髪紐。
主さまとお揃いになるようにといつも2本買って来てくれて、主さまの髪に結ぶのが日課だった。
「懐かしい…。父様、私、これが欲しいの」
「そんなのでいいのかい?もっと雅なものがあるよ」
「ううん、これがいいの。道長様、どう?可愛い?」
垂らしている長い髪を前に持ってきて髪紐をあててみて見上げると、
黙っていれば意外と男前に見える道長の顔は赤くなりながら、何とか振り絞った。
「う、うむ、可愛いぞ!」
「もっと高価なものをねだってもいいのに」
笑いながら髪紐を買ってもらい、それを手に握りしめながらまたあちこち見て回りながら歩く。
「あの髪紐、もう1本あったはずなんだけど…おかしいねえ…。あれ?」
息吹たちが見えなくなった時、店主が誰が置いて行ったかわからない金を見て納得顔で頷いた。
「あたしがよそ見してる間に誰かがあの髪紐を買って行ったんだね」
――息吹があちこち顔を出しているうちにどんどん晴明たちと離れて行ってしまい、
気が付いた時には人が居ない場所に迷い込んでしまって、そこでようやく晴明たちとはぐれたことに気が付いて方向転換しようとすると…
「どこのお姫さんだ?高価な着物着てるし…こりゃ別嬪さんだ」
「…だ、誰……?」
無精ひげを生やした屈強な男が息吹の前に立っていて、後ずさるがまた1歩詰められて、手を掴まれた。
「や、やめて下さい…っ」
「あんたは人買いに売って、その着物も売ればぼろ儲けだ!来い!」
「きゃ…っ」
口を大きな手で塞がれて大声が出せなくなり、肩に担がれようとした時…
「ぎゃっ!な、なんだ!?」
男の右手の甲がすっぱりと切れて鮮血が吹き出し、肩から降りると弾みで落とした髪紐を拾い上げ、声もなく息吹が後ずさる。
何が起きているのかわからなかった。

