「少し休憩を取れ」
唐突に主さまに声をかけられた息吹は手を止めてきょとんとした顔で主さまを見つめた。
「でもまだ終わってないし…」
「床なんか毎日磨かなくてもいい。ちょっとこっちに座れ」
もしや説教をされるのでは…という顔をした息吹に少し笑みを浮かべて隣を促すと、雑巾を置いて大人しく隣に座って一緒に庭を眺めた。
主さまは直接的にならないように色々な言葉を頭の中で選んで探して、息吹に顔を向けた。
「お前…何か悩んでいるだろう?どうした?」
「え…、別に…悩んでないよ?どうして?」
「嘘をつくな。度々沈んだ顔をしている姿を見かける。…俺にも話せないことなのか?」
「…だから悩みなんかないってば。主さまの心配性」
「…ならいい。今日はもう帰る」
――さっき来たばかりなのに。
まだ会話らしい会話もしていないうちに主さまが腰を上げて帰ろうとしたので、慌てた息吹は主さまの腕に縋り付いて引き留めた。
「主さまっ」
「ここに俺が居ても無意味だ。何の助けにもなれず、助けも求めてこない。こんなことで夫婦になれるとでも思っているのか?呆れた。手を離せ」
「やだっ、主さま…っ」
とうとう涙声になって腕に顔を押し付けてきた息吹に肩で息をついた主さまは、腕に縋り付いたままの息吹を引っ張るようにして息吹の部屋に連れ込むと、襖を閉め、さらに結界も張った。
「…どうした?」
「……」
口を開くまで十数分かかった。
短気な部類の主さまはじっと沈黙に堪えて、息吹を見つめ続けたその結果――
「夢に…空海さんが出てくるの。毎日…毎日出て来て、“会って話をしよう”って…」
「…それで?」
「毎日おでこに触ってくるの。触られるとなんか…おかしくなるの。身体がふわふわして…ぐにゃぐにゃして…」
――空海が息吹の夢を介して何かしらの術を施そうとしている…
途端、主さまの身体から恐ろしいまでの殺気が吹き出し、池の人魚が恐れを為して潜って隠れたり、式神が晴明を呼びに奥へ行ったり、天候が怪しくなった。
息吹は主さまが怒ったのを察してまた腕に縋り付き、いやいやと首を振った。
「駄目、主さま!」
「…もう許さんぞ」
殺してやる。
息吹を惑わせる輩は何人たりとも許さない。
唐突に主さまに声をかけられた息吹は手を止めてきょとんとした顔で主さまを見つめた。
「でもまだ終わってないし…」
「床なんか毎日磨かなくてもいい。ちょっとこっちに座れ」
もしや説教をされるのでは…という顔をした息吹に少し笑みを浮かべて隣を促すと、雑巾を置いて大人しく隣に座って一緒に庭を眺めた。
主さまは直接的にならないように色々な言葉を頭の中で選んで探して、息吹に顔を向けた。
「お前…何か悩んでいるだろう?どうした?」
「え…、別に…悩んでないよ?どうして?」
「嘘をつくな。度々沈んだ顔をしている姿を見かける。…俺にも話せないことなのか?」
「…だから悩みなんかないってば。主さまの心配性」
「…ならいい。今日はもう帰る」
――さっき来たばかりなのに。
まだ会話らしい会話もしていないうちに主さまが腰を上げて帰ろうとしたので、慌てた息吹は主さまの腕に縋り付いて引き留めた。
「主さまっ」
「ここに俺が居ても無意味だ。何の助けにもなれず、助けも求めてこない。こんなことで夫婦になれるとでも思っているのか?呆れた。手を離せ」
「やだっ、主さま…っ」
とうとう涙声になって腕に顔を押し付けてきた息吹に肩で息をついた主さまは、腕に縋り付いたままの息吹を引っ張るようにして息吹の部屋に連れ込むと、襖を閉め、さらに結界も張った。
「…どうした?」
「……」
口を開くまで十数分かかった。
短気な部類の主さまはじっと沈黙に堪えて、息吹を見つめ続けたその結果――
「夢に…空海さんが出てくるの。毎日…毎日出て来て、“会って話をしよう”って…」
「…それで?」
「毎日おでこに触ってくるの。触られるとなんか…おかしくなるの。身体がふわふわして…ぐにゃぐにゃして…」
――空海が息吹の夢を介して何かしらの術を施そうとしている…
途端、主さまの身体から恐ろしいまでの殺気が吹き出し、池の人魚が恐れを為して潜って隠れたり、式神が晴明を呼びに奥へ行ったり、天候が怪しくなった。
息吹は主さまが怒ったのを察してまた腕に縋り付き、いやいやと首を振った。
「駄目、主さま!」
「…もう許さんぞ」
殺してやる。
息吹を惑わせる輩は何人たりとも許さない。

