主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】

「できれば2人で会いたい。どうにかできないだろうか」


…それは無理な相談に思えた。

空海と深く付き合ってしまうと、きっと晴明と主さまがそれを許さず、もしかしたら空海に攻撃さえしてしまうかもしれない。

2人共冷静沈着に見えるが、実際は怒るとものすごく怖いし、力を行使することを厭わない性格をしている。


正直言って空海のことはまだほとんどよく知らないけれど…

自分の何かを知っている気がする。


鵜目姫が祖であることをもしかしたら空海は…知っているのだろうか。


「会えないの…ごめんなさい。空海さん、私が…どうしたの?やっぱり何かおかしいの?」


「やっぱり…とは?」


「私…どこかおかしいんでしょ?だから気になったんでしょ?私…人っぽくないの?どうなの?」


逆に問い詰めると、空海は難しい顔をして錫杖で大地をとんと叩いた。


「よく探ってみないとわからないが…そなたの奥底に何かが蠢いている。そなたは…」


「…なに?」


息を詰めて二の次を待っていたが、空海はそのまま1歩2歩後ずさると、首を振った。


「夢の中ではなんとも。また夢の中で会いに来る。晴明殿と幽玄町の主さまの目を盗んで会えるのならば、きっと何かがわかるだろう。…さらばだ」


「あ…空海さん!」


――はっと目が覚めた。

額には大粒の汗が伝い、腕で拭おうとすると、それを拭ったのは主さまの着物の袖だった。


「…どうした、うなされていたぞ」


「主さま…わかんない…怖い夢でも見たのかも」


「…こっちに来い」


ぎゅうっと抱きしめられて、怖さのあまり主さまにしがみついた。


ずっとずっと、疑ってきたのだ。


“私は何者なの”と。


鵜目姫が祖である限り完全な人ではないことはわかっていつつも、それからどの位長い年月が横たわってきたのか。

その間に血は薄れてほとんど人に変わりないはずなのに、どこかで自分自身を疑っている。


そしてもし…人ではなかったら…

長く生きられるのだろうか?


長く生きて…主さまの傍に居れるのだろうか?


「息吹…?」


「主さま…なんだか怖い…」


「…」


主さまは何も問い質さずに息吹を抱きしめ続けた。

その腕の力強さと労わるような眼差しに救われて、嗚咽を堪えて胸に顔を埋め続けた。