何故か顔を真っ赤にしている主さまににじり寄った息吹は、目の前に座ると首を傾けて顔を覗き込んだ。
「主さま?どうしたの?」
「…なんでもない!」
「じゃあこんな朝から何しに来たの?いつもなら寝てるはずでしょ?」
主さまは赤子に乳をやりながら息吹と瞳を合さずに俯いたまま、低い声でぼそりと呟いた。
「…お前に会いに来た。理由はそれ以上必要か?」
「!う、ううん、嬉しい…。主さま…会いに来てくれてありがと」
――空海の存在が不気味すぎるので、しばらくは幽玄町には来させない方がいいかもしれないと考えていた主さまは、のっそりと入ってきた晴明を見上げると鼻で笑われた。
「耳まで真っ赤だな。何をした?」
「何もしてない!それより晴明。この屋敷の結界に不備はないだろうな?あの坊主が侵入してきたら…」
「強力な術を使うこともできるが、逆に警備を強めすぎると不審がられる。こういうのは均衡が必要なのだよ」
「よくわからん。とにかく後で俺が見て回る」
「じゃあ私も一緒について行きますっ。裏庭をお散歩しよ」
あくまで事情を知らない息吹はのほほんとしており、そういったのんびり屋の一面は嫌いではない主さまが頷くと、部屋にひょっこりと相模が顔を出しに来た。
「あ…十六夜さん。早いね」
「……」
「相模、後でお散歩しに行くんだけど一緒に…」
「2人で十分だ。小僧は母の容態を案じて傍に居てやれ」
息吹と2人で散歩をしたい主さまが何かと理由をつけて相模の同行を拒否すると、晴明がひそりと笑って懐から包み紙を取り出した。
「萌のために調合した薬だ。これを渡して来なさい。朝餉の用意ができたらまた声をかける」
「ありがとうございます!晴明様はなんでもできるんですね!」
瞳をきらきらと輝かせて晴明を絶賛すると、それに息吹が同調して興奮した声を上げた。
「わかるっ?父様はなんでもできるんだからっ。私が小さかった頃、熱を出した時にいつもお薬を作ってくれてね、それで…」
「……」
――そう言う風に自慢げに自分のことを語ってほしい主さまは晴明に嫉妬しつつ涼しい顔をしてみせると、何もかもお見通しの晴明は、ひざを叩いて愉快そうに大笑いをしてみせた。
「そうだぞ、私はなんでもできるのだ」
「…」
主さま、歯ぎしり。
「主さま?どうしたの?」
「…なんでもない!」
「じゃあこんな朝から何しに来たの?いつもなら寝てるはずでしょ?」
主さまは赤子に乳をやりながら息吹と瞳を合さずに俯いたまま、低い声でぼそりと呟いた。
「…お前に会いに来た。理由はそれ以上必要か?」
「!う、ううん、嬉しい…。主さま…会いに来てくれてありがと」
――空海の存在が不気味すぎるので、しばらくは幽玄町には来させない方がいいかもしれないと考えていた主さまは、のっそりと入ってきた晴明を見上げると鼻で笑われた。
「耳まで真っ赤だな。何をした?」
「何もしてない!それより晴明。この屋敷の結界に不備はないだろうな?あの坊主が侵入してきたら…」
「強力な術を使うこともできるが、逆に警備を強めすぎると不審がられる。こういうのは均衡が必要なのだよ」
「よくわからん。とにかく後で俺が見て回る」
「じゃあ私も一緒について行きますっ。裏庭をお散歩しよ」
あくまで事情を知らない息吹はのほほんとしており、そういったのんびり屋の一面は嫌いではない主さまが頷くと、部屋にひょっこりと相模が顔を出しに来た。
「あ…十六夜さん。早いね」
「……」
「相模、後でお散歩しに行くんだけど一緒に…」
「2人で十分だ。小僧は母の容態を案じて傍に居てやれ」
息吹と2人で散歩をしたい主さまが何かと理由をつけて相模の同行を拒否すると、晴明がひそりと笑って懐から包み紙を取り出した。
「萌のために調合した薬だ。これを渡して来なさい。朝餉の用意ができたらまた声をかける」
「ありがとうございます!晴明様はなんでもできるんですね!」
瞳をきらきらと輝かせて晴明を絶賛すると、それに息吹が同調して興奮した声を上げた。
「わかるっ?父様はなんでもできるんだからっ。私が小さかった頃、熱を出した時にいつもお薬を作ってくれてね、それで…」
「……」
――そう言う風に自慢げに自分のことを語ってほしい主さまは晴明に嫉妬しつつ涼しい顔をしてみせると、何もかもお見通しの晴明は、ひざを叩いて愉快そうに大笑いをしてみせた。
「そうだぞ、私はなんでもできるのだ」
「…」
主さま、歯ぎしり。

