「そなたは百鬼夜行の王としてもう少し寛容な心を持つべきだと思うが、どうだ?」
「…俺は十分寛容だ」
「どの口がそのような諫言を?面白すぎて臍で茶が沸かせるぞ」
「…」
自分をいじめようとしているのだと察した主さまがその場から離れようと腰を上げた時、晴明がまるで矢のように扇子を主さまの肩に投げつけた。
「…何をする」
「相模の正体が何だか気になるか?」
「…ただの餓鬼だろうが」
「それがそうでもないようだ。そなたは空海という僧にもう会ったか?」
「会ってない。息吹から話を聴いただけだ」
「ふむ、そうか。ならばそなたに話すのはもうしばらく後にしておこう。私もしばし探りを入れてみる」
まるで会話にならず、ただ関心の種を植え付けられただけの主さまは扇子を晴明に向けて投げ返した。
「息吹が…危険なのか?」
「まだわからぬ。ただその空海という僧が何やら息吹に関心を抱いているのは確かだな。釘を打っておいたが動じていない様子だった。とりあえず、相模母子と共に夕餉を摂ろう。そして話を聴いてみろ。言っておくがそなたの正体は明かすな」
「…わかった」
そわそわと台所の方に目を遣っていると、息吹がひょこっと顔を出した。
急に人数が増えたので食材が足りないらしく、たすき掛けをしていた紐を解くとばたばたと近付いて来て主さまの手をぎゅっと握った。
「な…っ」
「父様、ちょっとお買い物に行ってきます!主さまについて来てもらうから大丈夫だよっ」
「ああ、行っておいで。滋養のつくものを買って来てあげなさい」
「はいっ」
――聴きたいことが沢山あったのだが、息吹から触れてきて息吹と一緒に買い物ができることに喜びを感じた主さまは引っ張られるがままに庭に降りて門を潜った。
「どこへ行く」
「七草粥を作ってあげようと思って。あとお魚も!鳥が売ってたら欲しいんだけど…あと卵!」
「お前…俺に持たせる気で連れ出したな?」
「持ってくれるでしょ?十六夜さん」
「…!」
ぞくっと身体が震えた。
息吹に真実の名を口にされると、身体の内で何かが暴れているような感覚に襲われてしまう。
主さまは息吹に勘付かれないようにさっさと歩き出すと息吹の手を引いた。
「…俺は十分寛容だ」
「どの口がそのような諫言を?面白すぎて臍で茶が沸かせるぞ」
「…」
自分をいじめようとしているのだと察した主さまがその場から離れようと腰を上げた時、晴明がまるで矢のように扇子を主さまの肩に投げつけた。
「…何をする」
「相模の正体が何だか気になるか?」
「…ただの餓鬼だろうが」
「それがそうでもないようだ。そなたは空海という僧にもう会ったか?」
「会ってない。息吹から話を聴いただけだ」
「ふむ、そうか。ならばそなたに話すのはもうしばらく後にしておこう。私もしばし探りを入れてみる」
まるで会話にならず、ただ関心の種を植え付けられただけの主さまは扇子を晴明に向けて投げ返した。
「息吹が…危険なのか?」
「まだわからぬ。ただその空海という僧が何やら息吹に関心を抱いているのは確かだな。釘を打っておいたが動じていない様子だった。とりあえず、相模母子と共に夕餉を摂ろう。そして話を聴いてみろ。言っておくがそなたの正体は明かすな」
「…わかった」
そわそわと台所の方に目を遣っていると、息吹がひょこっと顔を出した。
急に人数が増えたので食材が足りないらしく、たすき掛けをしていた紐を解くとばたばたと近付いて来て主さまの手をぎゅっと握った。
「な…っ」
「父様、ちょっとお買い物に行ってきます!主さまについて来てもらうから大丈夫だよっ」
「ああ、行っておいで。滋養のつくものを買って来てあげなさい」
「はいっ」
――聴きたいことが沢山あったのだが、息吹から触れてきて息吹と一緒に買い物ができることに喜びを感じた主さまは引っ張られるがままに庭に降りて門を潜った。
「どこへ行く」
「七草粥を作ってあげようと思って。あとお魚も!鳥が売ってたら欲しいんだけど…あと卵!」
「お前…俺に持たせる気で連れ出したな?」
「持ってくれるでしょ?十六夜さん」
「…!」
ぞくっと身体が震えた。
息吹に真実の名を口にされると、身体の内で何かが暴れているような感覚に襲われてしまう。
主さまは息吹に勘付かれないようにさっさと歩き出すと息吹の手を引いた。

