主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】

主さまの腕の中には息吹が。

息吹の腕の中には赤子が。

赤子の上には風呂敷が。


空を飛んでしばらくすると日輪草が咲き乱れる可愛くて素敵な場所が見えて、その中心に降り立った息吹は背丈よりも大きな日輪草の群れに歓声を上げた。


「綺麗!可愛い!主さま、花の種みたいのが詰まってる!これって植えたらうちのお屋敷の庭にも生えるのかなあ?」


――息吹の代わりに赤子をあやしてやっていた主さまは息吹の言葉に敏感に反応した。


息吹が“うちのお屋敷の庭”と言った。

うち…

つまり、息吹が生涯住むことになる自分の屋敷のことだ。


そういうのだけは敏感な主さまは密かに頬を赤らめて俯くと、なるべく平静を装いながら低い声で返した。


「多分生えるだろう。…採っていくか?」


「うんっ!ね、ちょっと歩こうよ。どこまで続いてるのかなあ、主さま早く!」


いつもは重たい腰も軽やかに上がり、赤子を腕に抱いた主さまの着物の袖を握った息吹は本当に嬉しそうで、息吹とのいちゃいちゃ希望の主さまは“赤子さえいなければ…”と思いつつも誰にも邪魔されない状況に、にやにや。


「ここでしかゆっくり2人きりになれないから楽しいね。あのね、こんな感じで定期的に2人で会えたりできないかな。主さまの部屋だと…なんかちょっと…」


「…お前が望むならそうしてやる」


「ほんとっ?嬉しいっ」


全開の笑顔で見上げられた主さまは急に恥ずかしくなり、息吹の腕に赤子を押し付けると少し開けた場所に腰を下ろして煙管を噛んだ。


「屋敷に居ると誰かが必ず俺たちの行動を見張っている。あいつらは俺とお前が夫婦になるのを望んでいるんだ。だが…晴明から1年の期限を設けられた。だからまだ誰にも言うな」


「うん…でも私から父様にお願いしてみたら少しは期限が短くなったりしないかなあ?」


…寝耳に水だった主さまが眉を上げて息吹に目を遣ると、結果的に“主さまと早く夫婦になりたい”と言ってしまったようなものになった息吹は頬をほんのり赤く染めて赤子の頬をぷにぷにと突いた。


「やっぱ駄目だよね?うん、きっと駄目だよ。怒られるかもしんないからやっぱり今の無し!主さま太陽の光大丈夫?ちょっと木陰に移動しようよ」


息吹の提案で木陰に移動したものの、欲望がじわじわ。

いちゃいちゃ解禁。