主さまたち妖は、人と同じように食事を摂らなくても生きてゆける。
…だがこの幽玄町の主さまの屋敷で食事を摂る時は、いつもみんな同じように同じものを食べてくれるので、独りで食事をしたことはない。
今日も山姫や雪女と雪男、そして主さまが揃って食事をしてくれて、時々赤子に目を遣りながら楽しい時を過ごした。
「今日は少し出かける。夕方までには戻って来る」
「あいよ。お1人でなんて危ないですよ、誰か伴を…」
「1人じゃない。息吹と赤子を借りて行く」
皆が顔を上げて息吹と主さまに注目した。
特に雪男は一瞬唇を尖らせ、箸を置くと前のめりになって顔を近付けてきた。
「…どこ行くんだよ」
「え?わ、わかんない。ねえ主さま、どこに行くの?あ、わかった!この子の母親を捜しに行くんでしょ?」
「……そうだ」
逢引、だとは口が裂けても言えない。
母代りの山姫にさえ主さまと夫婦になることは言っていないのだから、晴明と銀以外の者に知られるわけにはゆかないのだ。
何せ様々な問題がまだ山積み状態なのだから。
「じゃあ俺も一緒に行っていいか?」
「…陽が出ているうちから妖がうろうろすると皆が怖がる。お前は母と子水入らずで楽しめ」
「息吹と逢引するんじゃ…」
「氷雨、主さまに口答えをするのはおやめなさい」
母に窘められた雪男はぐっと黙り込むと息吹と目を合わせ、息吹が口をぱくぱくさせて“ごめんね”と言ったのを見ると肩を竦めた。
「息吹、気を付けろよ」
「何に気を付けろと言っているんだ?」
すまし汁を飲み干した主さまが箸を置き、臨戦態勢になりかねない状況におろおろしていると、その状況を打破したのは赤子の泣き声。
「ぎゃーん!」
「あ、お乳あげなきゃ。主さま、その後でもいいよね?」
「ああ」
「母様、お片付けしてくるね。みんなは座ってていいよ」
食器を盆に乗せて台所へ行き、束子を手にした時…背中からぎゅうっと抱きしめてきた者のひんやりとした腕の感触に息吹の身体が硬直した。
主さまではない。
…雪男だ。
「心配なんだけど」
「ど、どうして心配するの?すぐ帰って来るから。ね?」
おどおどすると、雪男は息吹の唇を人差し指でちょんと突くと居間へと戻って行った。
息吹、どきどき。
…だがこの幽玄町の主さまの屋敷で食事を摂る時は、いつもみんな同じように同じものを食べてくれるので、独りで食事をしたことはない。
今日も山姫や雪女と雪男、そして主さまが揃って食事をしてくれて、時々赤子に目を遣りながら楽しい時を過ごした。
「今日は少し出かける。夕方までには戻って来る」
「あいよ。お1人でなんて危ないですよ、誰か伴を…」
「1人じゃない。息吹と赤子を借りて行く」
皆が顔を上げて息吹と主さまに注目した。
特に雪男は一瞬唇を尖らせ、箸を置くと前のめりになって顔を近付けてきた。
「…どこ行くんだよ」
「え?わ、わかんない。ねえ主さま、どこに行くの?あ、わかった!この子の母親を捜しに行くんでしょ?」
「……そうだ」
逢引、だとは口が裂けても言えない。
母代りの山姫にさえ主さまと夫婦になることは言っていないのだから、晴明と銀以外の者に知られるわけにはゆかないのだ。
何せ様々な問題がまだ山積み状態なのだから。
「じゃあ俺も一緒に行っていいか?」
「…陽が出ているうちから妖がうろうろすると皆が怖がる。お前は母と子水入らずで楽しめ」
「息吹と逢引するんじゃ…」
「氷雨、主さまに口答えをするのはおやめなさい」
母に窘められた雪男はぐっと黙り込むと息吹と目を合わせ、息吹が口をぱくぱくさせて“ごめんね”と言ったのを見ると肩を竦めた。
「息吹、気を付けろよ」
「何に気を付けろと言っているんだ?」
すまし汁を飲み干した主さまが箸を置き、臨戦態勢になりかねない状況におろおろしていると、その状況を打破したのは赤子の泣き声。
「ぎゃーん!」
「あ、お乳あげなきゃ。主さま、その後でもいいよね?」
「ああ」
「母様、お片付けしてくるね。みんなは座ってていいよ」
食器を盆に乗せて台所へ行き、束子を手にした時…背中からぎゅうっと抱きしめてきた者のひんやりとした腕の感触に息吹の身体が硬直した。
主さまではない。
…雪男だ。
「心配なんだけど」
「ど、どうして心配するの?すぐ帰って来るから。ね?」
おどおどすると、雪男は息吹の唇を人差し指でちょんと突くと居間へと戻って行った。
息吹、どきどき。

