赤子がすやすや眠ってしまい、主さまも眠ってしまったため、息吹は部屋を出て庭に下りると、巾着袋から銀にもらった花の種を取り出し、花壇の前でしゃがみこんだ。
「ここでいいかな、すぐ育つって言ってたから楽しみ」
「あれを植えるのか?とても良い香りがするらしい。長い間楽しめるようだから、また種を取って増やすといい」
「ありがとう、銀さん」
貰えるだけ貰った数の種を植えて腰を上げると、ちょうど山姫がどこかへ出かける風だったので声をかけた。
「母様…どこかに行くの?」
「ああ、あの子の乳を貰ってこないと飢え死にしちまうだろ。あんたも来るかい?」
「!行くっ!父様、銀さん、行って来ますっ」
「ああ、気を付けて」
実は幽玄町を歩く機会はそんなになく、山姫と手を繋いで街へ入ると早速皆の視線が突き刺さり、居心地の悪い思いをしながら山姫の着物の袖を引っ張った。
「なんでみんな見てるの?」
「あんたが可愛らしいからだよ。ああ思い出すねえ、あんたが赤子だった頃、あたしはこうやって毎日乳をもらいに走り回ったんだ。懐かしいよ」
「そうなの?えへ…じゃあこれからは私も母様と一緒にお乳をもらいに行ってもいい?」
「ああ、いいよ。さあ着いたよ、ちょっと外で待ってな」
平屋の家の前で待たされた息吹は相変わらず衆目を集めており、やや人見知りをしてしまうので俯いて視線を合わせずにいると、しばらくしてから山姫が出て来た。
「貰ってきたよ、さあ早く戻って乳をあげようね」
「私があげるっ」
――そして幽玄町にはとある噂が駆け抜けた。
“主さまが育てた息吹という人間の女が、主さまの子を産んだ”と。
もちろん事実ではないが、乳を分けてもらって上機嫌の息吹の様子は赤子を産み立てという感じで、そんな噂が耳に入るのはそんなに遅くはなかった。
「戻りましたっ!父様、お乳をあげてくるねっ」
帰ってくるなり主さまの部屋に駆け込むと、ちょうど起きたのか赤子がぐずっており、抱っこするとしきりに胸をさわってきたので、母性が目覚めた息吹はきゅんとして瞳を細めた。
そして寝たふりの主さまは…薄目でそれを羨ましげに見ていた。
「ここでいいかな、すぐ育つって言ってたから楽しみ」
「あれを植えるのか?とても良い香りがするらしい。長い間楽しめるようだから、また種を取って増やすといい」
「ありがとう、銀さん」
貰えるだけ貰った数の種を植えて腰を上げると、ちょうど山姫がどこかへ出かける風だったので声をかけた。
「母様…どこかに行くの?」
「ああ、あの子の乳を貰ってこないと飢え死にしちまうだろ。あんたも来るかい?」
「!行くっ!父様、銀さん、行って来ますっ」
「ああ、気を付けて」
実は幽玄町を歩く機会はそんなになく、山姫と手を繋いで街へ入ると早速皆の視線が突き刺さり、居心地の悪い思いをしながら山姫の着物の袖を引っ張った。
「なんでみんな見てるの?」
「あんたが可愛らしいからだよ。ああ思い出すねえ、あんたが赤子だった頃、あたしはこうやって毎日乳をもらいに走り回ったんだ。懐かしいよ」
「そうなの?えへ…じゃあこれからは私も母様と一緒にお乳をもらいに行ってもいい?」
「ああ、いいよ。さあ着いたよ、ちょっと外で待ってな」
平屋の家の前で待たされた息吹は相変わらず衆目を集めており、やや人見知りをしてしまうので俯いて視線を合わせずにいると、しばらくしてから山姫が出て来た。
「貰ってきたよ、さあ早く戻って乳をあげようね」
「私があげるっ」
――そして幽玄町にはとある噂が駆け抜けた。
“主さまが育てた息吹という人間の女が、主さまの子を産んだ”と。
もちろん事実ではないが、乳を分けてもらって上機嫌の息吹の様子は赤子を産み立てという感じで、そんな噂が耳に入るのはそんなに遅くはなかった。
「戻りましたっ!父様、お乳をあげてくるねっ」
帰ってくるなり主さまの部屋に駆け込むと、ちょうど起きたのか赤子がぐずっており、抱っこするとしきりに胸をさわってきたので、母性が目覚めた息吹はきゅんとして瞳を細めた。
そして寝たふりの主さまは…薄目でそれを羨ましげに見ていた。

