翌朝すぐ傍で寝息が聴こえたので目を開けると…晴明がすうすうと眠っていた。
…主さまも綺麗な男だが、晴明も負けない位に綺麗な男だ。
目元は主さまより少し細いが、睫毛も長いし鼻筋も通っているし、こんな男が自分の父親代わりだとはもったいないくらいだ。
「父様、父様起きて」
「…ん?ああ…一緒に眠ってしまっていたか。寝顔を楽しんでいたら私も眠たくなってしまった」
気付けば腕枕もしてくれていて、痺れているのではないかと思った息吹は起き上がって正座をすると晴明の右腕を揉んだ。
「今日は…主さまのお屋敷に行っちゃ駄目なんだよね?」
「ああそうだよ。想いが叶ったとはいえ、嫁入りの日までは男女同衾するべからず。十六夜に襲われるぞ」
「父様とこうしてるのは同衾じゃないの?」
「同衾ではあるが父娘の間柄だし、第一私は十六夜のように下心満載ではないからね。あと1年の間は恥じぬような女になるよう努力しなさい」
「はい。…でも…文も駄目?」
「それ位は許してあげよう。私は鬼ではないからね」
――ようやく両想いになれたのだから、その直後に逢瀬を禁じたのはさすがに懲罰とも言える。
主さまも焦れに焦れているだろうが、あと1年は耐えてもらわなければ夫婦になれないことも伝えている。
晴明はごろりと寝返りを打つと、肩で笑った。
「さあ、どこまで耐えられるか」
「え?今なにか言った?」
「いや、なんでも。さて、私もそろそろ本気を出すとしようか。山姫に」
「!父様っ、母様は強敵だから頑張ってっ!本当の夫婦になってくれたら私すっごく嬉しいっ」
「もちろんだとも。さあ、そろそろ起きよう。今日は道長が来るからね」
「あ…、はい…。ちゃんとお断りしなくちゃ…」
しゅんとなった息吹が俯くと、晴明は頬杖を突いて固く握りしめられた息吹の拳を撫でた。
「聡い男だから理解してくれる。だが意外と性根が弱い男故、やんわりと頼むよ」
「はい。父様、朝餉を作って来ますね。その辺でごろごろしてて下さいっ」
息吹を手放す日――
晴明はまだそれを想像できずにいた。
…主さまも綺麗な男だが、晴明も負けない位に綺麗な男だ。
目元は主さまより少し細いが、睫毛も長いし鼻筋も通っているし、こんな男が自分の父親代わりだとはもったいないくらいだ。
「父様、父様起きて」
「…ん?ああ…一緒に眠ってしまっていたか。寝顔を楽しんでいたら私も眠たくなってしまった」
気付けば腕枕もしてくれていて、痺れているのではないかと思った息吹は起き上がって正座をすると晴明の右腕を揉んだ。
「今日は…主さまのお屋敷に行っちゃ駄目なんだよね?」
「ああそうだよ。想いが叶ったとはいえ、嫁入りの日までは男女同衾するべからず。十六夜に襲われるぞ」
「父様とこうしてるのは同衾じゃないの?」
「同衾ではあるが父娘の間柄だし、第一私は十六夜のように下心満載ではないからね。あと1年の間は恥じぬような女になるよう努力しなさい」
「はい。…でも…文も駄目?」
「それ位は許してあげよう。私は鬼ではないからね」
――ようやく両想いになれたのだから、その直後に逢瀬を禁じたのはさすがに懲罰とも言える。
主さまも焦れに焦れているだろうが、あと1年は耐えてもらわなければ夫婦になれないことも伝えている。
晴明はごろりと寝返りを打つと、肩で笑った。
「さあ、どこまで耐えられるか」
「え?今なにか言った?」
「いや、なんでも。さて、私もそろそろ本気を出すとしようか。山姫に」
「!父様っ、母様は強敵だから頑張ってっ!本当の夫婦になってくれたら私すっごく嬉しいっ」
「もちろんだとも。さあ、そろそろ起きよう。今日は道長が来るからね」
「あ…、はい…。ちゃんとお断りしなくちゃ…」
しゅんとなった息吹が俯くと、晴明は頬杖を突いて固く握りしめられた息吹の拳を撫でた。
「聡い男だから理解してくれる。だが意外と性根が弱い男故、やんわりと頼むよ」
「はい。父様、朝餉を作って来ますね。その辺でごろごろしてて下さいっ」
息吹を手放す日――
晴明はまだそれを想像できずにいた。

