それからは山姫と雪女が作ってくれた豪華な料理に舌鼓を打ち、息吹は口を動かし続けた。
「おい、そんな口に入れたらむせるぞ。ゆっくり食えよな」
「だって早く太りたいんだもん。沢山食べなくちゃ」
「ま、まあ…確かに痩せだけど…そんながりがりってわけでもないぜ?」
「そう?でももうちょっと太りたいの」
料理をぱくつく息吹には皆の視線が集中していた。
昔からこの主さまの屋敷で何かを食べている時は百鬼からこうして見守られていることが多かったので気にもしていなかったが、百鬼たちは息吹を“食べ物”として見たことがない。
料理を美味しそうに食べている息吹をまるで子を見る親のような感情を持って見つめているのだ。
「ごほっ、お、お水…!」
「俺が取って来てやるよ」
「ううん、自分でできるから大丈夫っ」
そして台所へ行くと、背が高く、色は濃いが高価な着物姿の男の背中が在った。
「主さま?」
「なんだ、どうした」
主さまも水を飲みに来ていたらしく、隣に立ってまだむせながら水を飲んでひと息つくと、主さまが雪男から貰った簪に触れてきた。
「な、なに?」
「…こんなもの、つけるな」
「え、でも…可愛いし…気に入ったし…時々つけようかなって思ってるけど…」
「…俺がもっとお前に似合うものを買ってやる」
――主さまがやきもちを妬いてくれているのだと知って無性に嬉しくなった息吹は、広間からは死角になるように主さまの懐に立ち、濃紺の帯をきゅっと握って見上げた。
「嬉しい。じゃあまた2人でお買い物に行こうね」
「……わかったからあまり俺に触るな」
「だって触りたいんだもん。ねえ主さま、沢山食べて早くぷくぷくになるから、その時は沢山触ってね?」
「!!………いいから早くあっちに行け!」
怒られてしまい、舌を突き出すと広間に戻り、息吹を待ち受けていた百鬼たちが一斉ににじり寄ってきた。
「息吹、これも食え。あれも食え。それもだ!」
「そんなに食べれないよっ」
百鬼に愛される人間の女――
息吹は幸せの絶頂を感じていた。
「おい、そんな口に入れたらむせるぞ。ゆっくり食えよな」
「だって早く太りたいんだもん。沢山食べなくちゃ」
「ま、まあ…確かに痩せだけど…そんながりがりってわけでもないぜ?」
「そう?でももうちょっと太りたいの」
料理をぱくつく息吹には皆の視線が集中していた。
昔からこの主さまの屋敷で何かを食べている時は百鬼からこうして見守られていることが多かったので気にもしていなかったが、百鬼たちは息吹を“食べ物”として見たことがない。
料理を美味しそうに食べている息吹をまるで子を見る親のような感情を持って見つめているのだ。
「ごほっ、お、お水…!」
「俺が取って来てやるよ」
「ううん、自分でできるから大丈夫っ」
そして台所へ行くと、背が高く、色は濃いが高価な着物姿の男の背中が在った。
「主さま?」
「なんだ、どうした」
主さまも水を飲みに来ていたらしく、隣に立ってまだむせながら水を飲んでひと息つくと、主さまが雪男から貰った簪に触れてきた。
「な、なに?」
「…こんなもの、つけるな」
「え、でも…可愛いし…気に入ったし…時々つけようかなって思ってるけど…」
「…俺がもっとお前に似合うものを買ってやる」
――主さまがやきもちを妬いてくれているのだと知って無性に嬉しくなった息吹は、広間からは死角になるように主さまの懐に立ち、濃紺の帯をきゅっと握って見上げた。
「嬉しい。じゃあまた2人でお買い物に行こうね」
「……わかったからあまり俺に触るな」
「だって触りたいんだもん。ねえ主さま、沢山食べて早くぷくぷくになるから、その時は沢山触ってね?」
「!!………いいから早くあっちに行け!」
怒られてしまい、舌を突き出すと広間に戻り、息吹を待ち受けていた百鬼たちが一斉ににじり寄ってきた。
「息吹、これも食え。あれも食え。それもだ!」
「そんなに食べれないよっ」
百鬼に愛される人間の女――
息吹は幸せの絶頂を感じていた。

