実は…主さまの誕生日の贈り物は用意していない。
妖は誕生日は祝わないと言っていたし、それでも何かを贈りたかったのだが…主さまにどう告白しようかとそればかり考えていて、忘れていたというのが本音だ。
“しまった”という顔をした息吹の様子に完全にご機嫌斜めになってしまった主さまは息吹に背を向けてだんまりを決め込んだ。
「主さま違うのっ!何かお祝いをって思ってたんだけど、なんにも思いつかなかったの!」
「息吹、元々妖はそのようなものは祝わぬのだ、気にすることでもない」
「でも父様…主さま怒ってるし…」
初の息吹の誕生日の席で息吹を悩ませるような態度を取っている主さまに腹を立てた晴明がぼそりと呟いた。
「息吹を嫁に貰うだけでは足りぬと言うか。それが最高の贈り物とは思わぬのか。では今回の件は無かったことに…」
「!ま、待て、…すまなかった」
「わかればいい。さあ息吹、十六夜のことは気にせず楽しみなさい。おや、雪男が何か持ってきたぞ」
どんちゃん騒ぎが続く中、雪男がもじもじしつつ息吹の前にどすんと座ると、ぶっきらぼうに白い箱を息吹に手渡した。
「雪ちゃん?これはなあに?」
「開けてみろよ。気に入らなかったら捨てていいから」
白い頬はほんのり桜色になり、主さまと晴明と銀が横目で見守る中開けてみると…藤の花の飾りのついた可愛い簪が目に入り、息吹が歓声を上げた。
「雪ちゃん!これ、すっごく可愛い!私にくれるのっ?」
「お、おう。お前誕生日だろ?何がいいのかわかんなくって悩んだけど…お前おしゃれっ気がないからこれでもつけて可愛らしくしろよ」
「雪ちゃんひどいっ。でもありがとう、すっごく嬉しいい!」
――思えば主さまも形のあるものではなく、珍しい日輪草の花畑を見せただけなので、文句を言える義理でもなかったのだが…
雪男が早速息吹の髪に簪をつけてやると、息吹の可愛らしさはますます際立ち、晴明が瞳を細めた。
「これは良いものを贈ってもらったな。息吹、選択を間違えたのではないかな?」
「!父様、しぃーっ!」
「??」
雪男がきょとんとする中、息吹は晴明の口を両手で塞いだ。
妖は誕生日は祝わないと言っていたし、それでも何かを贈りたかったのだが…主さまにどう告白しようかとそればかり考えていて、忘れていたというのが本音だ。
“しまった”という顔をした息吹の様子に完全にご機嫌斜めになってしまった主さまは息吹に背を向けてだんまりを決め込んだ。
「主さま違うのっ!何かお祝いをって思ってたんだけど、なんにも思いつかなかったの!」
「息吹、元々妖はそのようなものは祝わぬのだ、気にすることでもない」
「でも父様…主さま怒ってるし…」
初の息吹の誕生日の席で息吹を悩ませるような態度を取っている主さまに腹を立てた晴明がぼそりと呟いた。
「息吹を嫁に貰うだけでは足りぬと言うか。それが最高の贈り物とは思わぬのか。では今回の件は無かったことに…」
「!ま、待て、…すまなかった」
「わかればいい。さあ息吹、十六夜のことは気にせず楽しみなさい。おや、雪男が何か持ってきたぞ」
どんちゃん騒ぎが続く中、雪男がもじもじしつつ息吹の前にどすんと座ると、ぶっきらぼうに白い箱を息吹に手渡した。
「雪ちゃん?これはなあに?」
「開けてみろよ。気に入らなかったら捨てていいから」
白い頬はほんのり桜色になり、主さまと晴明と銀が横目で見守る中開けてみると…藤の花の飾りのついた可愛い簪が目に入り、息吹が歓声を上げた。
「雪ちゃん!これ、すっごく可愛い!私にくれるのっ?」
「お、おう。お前誕生日だろ?何がいいのかわかんなくって悩んだけど…お前おしゃれっ気がないからこれでもつけて可愛らしくしろよ」
「雪ちゃんひどいっ。でもありがとう、すっごく嬉しいい!」
――思えば主さまも形のあるものではなく、珍しい日輪草の花畑を見せただけなので、文句を言える義理でもなかったのだが…
雪男が早速息吹の髪に簪をつけてやると、息吹の可愛らしさはますます際立ち、晴明が瞳を細めた。
「これは良いものを贈ってもらったな。息吹、選択を間違えたのではないかな?」
「!父様、しぃーっ!」
「??」
雪男がきょとんとする中、息吹は晴明の口を両手で塞いだ。

